肝十二指腸間膜内に発生した神経鞘腫の1例

症例は44歳,女性.検診の腹部超音波検査にて肝門部に腫瘤を指摘され来院した.CTでは,肝十二指腸間膜内に長径82mm大の境界明瞭平滑な腫瘤を認めた.腫瘍は総肝動脈を腹側,門脈を背側,右肝動脈と胆管を右方,左肝動脈を左方に圧排し,尾側は膵頭部と密着していた.内部は低吸収,辺縁は淡い高吸収域や微小石灰化を伴い,造影では辺縁が漸増性に濃染し,中心部の造影効果は乏しかった.肝十二指腸間膜内に発生した腫瘍で,特に神経原性腫瘍を想定し腫瘍摘出術を施行した.割面は大部分が透明感を帯びた黄色で,一部暗赤色の部分も混在していた.病理学的検査では,腫瘍辺縁に紡錘形細胞が増生し束状配列を示している部分と浮腫状領域が...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 4; pp. 885 - 892
Main Authors 太田, 哲生, 牧野, 勇, 所, 智和, 高村, 博之, 宮下, 知治, 田島, 秀浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.885

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Summary:症例は44歳,女性.検診の腹部超音波検査にて肝門部に腫瘤を指摘され来院した.CTでは,肝十二指腸間膜内に長径82mm大の境界明瞭平滑な腫瘤を認めた.腫瘍は総肝動脈を腹側,門脈を背側,右肝動脈と胆管を右方,左肝動脈を左方に圧排し,尾側は膵頭部と密着していた.内部は低吸収,辺縁は淡い高吸収域や微小石灰化を伴い,造影では辺縁が漸増性に濃染し,中心部の造影効果は乏しかった.肝十二指腸間膜内に発生した腫瘍で,特に神経原性腫瘍を想定し腫瘍摘出術を施行した.割面は大部分が透明感を帯びた黄色で,一部暗赤色の部分も混在していた.病理学的検査では,腫瘍辺縁に紡錘形細胞が増生し束状配列を示している部分と浮腫状領域が混在しており,紡錘形細胞はS-100陽性で神経鞘腫と診断した. 本症例では術前に良性の神経原性腫瘍を想定していたため,肝動脈・門脈・胆管と密着していたが,これらを温存し腫瘍のみを摘出することが可能であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.885