左下頭頂小葉腫瘍に対する摘出術後に相貌変形視を呈した左利きの 1 例

左下頭頂小葉腫瘍の摘出術後に相貌変形視をきたした左利きの症例を経験した。症例は 10 歳代, 女児, 左利き。登校中に転倒・転落し, 頭部 MRI にて左頭頂葉腫瘍を指摘された。術前は意識清明で, 視力や視野, 眼球運動に異常を認めず, 視覚認知機能や言語機能は良好であった。覚醒下脳腫瘍摘出術が施行され, 言語機能は温存されたが相貌変形視が出現した。具体的には, 顔写真を注視した際に眉間を中心として出現する回転性の歪みと両側下顎周囲が浮き沈みするという大きさの変容が特徴であった。顔認知処理過程の大脳半球優位性は, 利き手が右利きの場合には右優位とされるが, 左利きの場合の大脳半球優位性は明らか...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 41; no. 4; pp. 368 - 376
Main Authors 中田, 光俊, 沖田, 浩一, 木下, 雅史, 八幡, 徹太郎, 中嶋, 理帆, 福永, 真哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 31.12.2021
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.41.368

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Summary:左下頭頂小葉腫瘍の摘出術後に相貌変形視をきたした左利きの症例を経験した。症例は 10 歳代, 女児, 左利き。登校中に転倒・転落し, 頭部 MRI にて左頭頂葉腫瘍を指摘された。術前は意識清明で, 視力や視野, 眼球運動に異常を認めず, 視覚認知機能や言語機能は良好であった。覚醒下脳腫瘍摘出術が施行され, 言語機能は温存されたが相貌変形視が出現した。具体的には, 顔写真を注視した際に眉間を中心として出現する回転性の歪みと両側下顎周囲が浮き沈みするという大きさの変容が特徴であった。顔認知処理過程の大脳半球優位性は, 利き手が右利きの場合には右優位とされるが, 左利きの場合の大脳半球優位性は明らかではない。本例は左利きであり, 左下頭頂小葉病変の術後に症状が出現したことから, 側性化異常を生じていた可能性が考えられた。本例における相貌変形視の発現機序として, 顔認知処理に関連する脳領域間の伝達不全または機能不均衡による可能性が推察された。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.41.368