倒立書字・倒立描画を呈した一症例
左中大脳動脈領域の脳梗塞により, 倒立書字・倒立描画を呈した症例を報告した。症例は基本的な視知覚機能は良好で, 文字・物体・画像の認知も保たれていたが, 向きの判断が困難であった。また, 文字・線画の正立像と倒立像の識別にも困難を示した。「線画」では上下の同定は可能であったが, 「文字」では上下の同定も困難であった。これらの特異的な徴候は, orientation agnosia と一致し発症 6 ヵ月後も残存した。線画と文字に対して外的手がかりを利用した空間定位の練習を 10 ヵ月実施したことによって, 倒立書字・倒立描画が消失した。症例の呈した症状を, 物体中心座標系と観察者中心座標系の視...
        Saved in:
      
    
          | Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 37; no. 4; pp. 372 - 379 | 
|---|---|
| Main Authors | , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
    
        31.12.2017
     | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 1348-4818 1880-6554  | 
| DOI | 10.2496/hbfr.37.372 | 
Cover
| Summary: | 左中大脳動脈領域の脳梗塞により, 倒立書字・倒立描画を呈した症例を報告した。症例は基本的な視知覚機能は良好で, 文字・物体・画像の認知も保たれていたが, 向きの判断が困難であった。また, 文字・線画の正立像と倒立像の識別にも困難を示した。「線画」では上下の同定は可能であったが, 「文字」では上下の同定も困難であった。これらの特異的な徴候は, orientation agnosia と一致し発症 6 ヵ月後も残存した。線画と文字に対して外的手がかりを利用した空間定位の練習を 10 ヵ月実施したことによって, 倒立書字・倒立描画が消失した。症例の呈した症状を, 物体中心座標系と観察者中心座標系の視点から考察した。倒立書字・倒立描画は, 障害されている空間座標系の脳内表象に基づいて, 運動を実行することで出現した可能性がある。 | 
|---|---|
| ISSN: | 1348-4818 1880-6554  | 
| DOI: | 10.2496/hbfr.37.372 |