自己の前開きシャツ着衣だけ左右の袖通し間違いが顕著に出現した 1 例─着衣の連続写真課題を用いた分析

着衣障害を呈した 60 歳代男性を担当した。患者は, 自己の前開きシャツ着衣で左右の袖通し間違い, 袖の穴と通す手の位置のずれ, ボタンの掛け間違いなどが出現し介助が必要だった。特に左右の袖通し間違いは気づかないことが多く, 着衣に関する病識の低下も顕著だった。ただし, 他者への前開きシャツ着衣や, 他の日常生活動作は遂行可能だった。一方, 神経心理学的所見は, 視覚性ワーキングメモリーや分配性注意の低下, 構成障害があった。また, ジェスチャー模倣や身体部位の聴覚指示課題など, 対象と自己の左右を同時に結び付けする課題は, 自己の用手の左右を誤ることがみられた。加えて, 前開きシャツ着衣の工...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 42; no. 4; pp. 416 - 423
Main Authors 小嶌, 麻木, 舞田, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 31.12.2022
Subjects
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.42.416

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Summary:着衣障害を呈した 60 歳代男性を担当した。患者は, 自己の前開きシャツ着衣で左右の袖通し間違い, 袖の穴と通す手の位置のずれ, ボタンの掛け間違いなどが出現し介助が必要だった。特に左右の袖通し間違いは気づかないことが多く, 着衣に関する病識の低下も顕著だった。ただし, 他者への前開きシャツ着衣や, 他の日常生活動作は遂行可能だった。一方, 神経心理学的所見は, 視覚性ワーキングメモリーや分配性注意の低下, 構成障害があった。また, ジェスチャー模倣や身体部位の聴覚指示課題など, 対象と自己の左右を同時に結び付けする課題は, 自己の用手の左右を誤ることがみられた。加えて, 前開きシャツ着衣の工程を分割して連続撮影した写真を正しく配列する課題では, 被写体を前方から撮影した写真は配列できたが, 後方から撮影した写真は配列できなかった。この後方から撮影した写真の配列ができるようになると, 左右の袖通し間違いや病識は改善し, 自己の前開きシャツ着衣ができるようになった。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.42.416