膵頭十二指腸切除術を施行した腸回転異常症を伴うVater乳頭部癌の1例

症例は61歳の男性で,倦怠感と黄疸を主訴に受診した.腹部CTにて肝内胆管および総胆管の拡張とVater乳頭部に造影効果を有する胆管壁の肥厚を認めた.また,上腸間膜動脈は上腸間膜静脈の右側を走行し,結腸は左側,小腸は右側に位置しており,腸回転異常症と診断した.Vater乳頭部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下PDと略記)を施行したが,手術所見で十二指腸は水平脚を形成せず尾側へ下降し,十二指腸前面にLadd靱帯を認め,Treitz靱帯は欠損していたことから,nonrotation typeの腸回転異常症と診断できた.再建は上行結腸右側の小腸をそのま...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 79; no. 4; pp. 914 - 920
Main Authors 鈴木, 善法, 川原田, 陽, 田中, 宏典, 平野, 聡, 北城, 秀司, 奥芝, 俊一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2018
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.79.914

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Summary:症例は61歳の男性で,倦怠感と黄疸を主訴に受診した.腹部CTにて肝内胆管および総胆管の拡張とVater乳頭部に造影効果を有する胆管壁の肥厚を認めた.また,上腸間膜動脈は上腸間膜静脈の右側を走行し,結腸は左側,小腸は右側に位置しており,腸回転異常症と診断した.Vater乳頭部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下PDと略記)を施行したが,手術所見で十二指腸は水平脚を形成せず尾側へ下降し,十二指腸前面にLadd靱帯を認め,Treitz靱帯は欠損していたことから,nonrotation typeの腸回転異常症と診断できた.再建は上行結腸右側の小腸をそのまま挙上し,Child変法で行った.術後経過は良好で術後13病日に自宅退院した.成人腸回転異常症を合併したVater乳頭部癌に対してPDを施行した稀な1例を経験したので報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.79.914