立体感覚における消去現象の発現機制

立体感覚における消去現象は能動的接触にかかわる複雑課題を用いて検査されるが, 両側同時刺激時に一側の手への刺激を正答できない場合, それがどんな水準の障害であるかという検討はなされていない。本研究では, 顕著な触覚性消去現象を呈した脳血管障害 2 例につき, 物品同定複雑検査に加え, 触覚性消去現象検査 (単純刺激) と立方体を用いた物品存在有無検査の 2 種類の検査を行い, 立体感覚における消去現象について質的観点から検討した。その結果, 症例 1 と症例 2 では 2 種類の検査で顕著な消去現象を認め, 立体感覚でも顕著な消去現象を認めた。経時的検討を行った症例 2 では, 2 種類の検査...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 42; no. 2; pp. 239 - 246
Main Authors 鎌田, 亜希, 伊藤, 皇一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.06.2022
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.42.239

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Summary:立体感覚における消去現象は能動的接触にかかわる複雑課題を用いて検査されるが, 両側同時刺激時に一側の手への刺激を正答できない場合, それがどんな水準の障害であるかという検討はなされていない。本研究では, 顕著な触覚性消去現象を呈した脳血管障害 2 例につき, 物品同定複雑検査に加え, 触覚性消去現象検査 (単純刺激) と立方体を用いた物品存在有無検査の 2 種類の検査を行い, 立体感覚における消去現象について質的観点から検討した。その結果, 症例 1 と症例 2 では 2 種類の検査で顕著な消去現象を認め, 立体感覚でも顕著な消去現象を認めた。経時的検討を行った症例 2 では, 2 種類の検査成績の改善と立体感覚の消去現象の改善とが並行した。両症例において両側同時複雑刺激の際に「 (一方の) 手には何もない」という内観が患側手に得られた。以上より両症例での立体感覚における消去現象は, 触覚性消去現象と同じ水準で生じている可能性が示唆された。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.42.239