Real-time PCR 法によるMycoplasma pneumoniae の検出と, そのマクロライド耐性化について

Mycoplasma pneumoniae(M. pneumoniae)は,若年齢者層に気管支炎や肺炎を引き起こす代表的な起因菌の一つである.M. pneumoniae の検出・同定には,抗体を認識する酵素免疫測定法や分離培養法が存在するが,前者では過去の感染による偽陽性,感染直後の偽陰性,後者では培養に時間がかかるなどの問題がある.そこで,我々はreal-time PCR を用いたM. pneumoniae 遺伝子の検出法を構築し,臨床検体からの検出を試みた.また,同時に検出されたM. pneumoniae の薬剤感受性試験およびマクロライド耐性化遺伝子変異についての検索も行った.マイコプラ...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 85; no. 6; pp. 652 - 657
Main Authors 中田, 千代, 蓮井, 正史, 藤本, 弘子, 乾, 佐知子, 中村, 竜也, 小池, 千裕, 高橋, 伯夫, 奥田, 和之, 大倉, ひろ枝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.11.2011
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi.85.652

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Summary:Mycoplasma pneumoniae(M. pneumoniae)は,若年齢者層に気管支炎や肺炎を引き起こす代表的な起因菌の一つである.M. pneumoniae の検出・同定には,抗体を認識する酵素免疫測定法や分離培養法が存在するが,前者では過去の感染による偽陽性,感染直後の偽陰性,後者では培養に時間がかかるなどの問題がある.そこで,我々はreal-time PCR を用いたM. pneumoniae 遺伝子の検出法を構築し,臨床検体からの検出を試みた.また,同時に検出されたM. pneumoniae の薬剤感受性試験およびマクロライド耐性化遺伝子変異についての検索も行った.マイコプラズマ肺炎が疑われた275 例のうち,real-time PCR でM. pneumoniae 陽性を示したのは,40 例(14.5%)であった.そのうち培養で陽性を示したのは16 例(5.8%)であった.16 例中,12 例(75%)でA2063G の変異を検出し,残りの4 例では変異を認めなかった.測定した16 株の薬剤感受性試験結果は,clarithromycin に耐性が11 株(MIC:≧64μg/mL),感受性(MIC : 0.0039μg/mL)が 4 株で,clarithromycin 耐性率は75%であった.なお,発育不良が1 株存在した.minocycline とキノロン系抗菌薬にはすべて感受性であった. 以上のように,M. pneumoniae に対する検出はreal-time PCR 法が,培養法よりも検出率が高かった.また,薬剤感受性結果とマクロライド耐性化遺伝子変異検索の結果は一致し,当院におけるM. pneumoniae のマクロライド系抗菌薬耐性率は,75%と高率であった.この原因として市中医療機関においてマクロライド系抗菌薬による治療が遷延し,当院を紹介受診する場合が多いためと考えられた.海外における耐性株検出の報告も増加していることから,マクロライド系抗菌薬を中心に耐性動向を把握することは重要であると考えられた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.85.652