顎関節鏡視下剥離授動術を併用し整復を行った陳旧性顎関節前方脱臼の1例

陳旧性顎関節前方脱臼では, 線維性癒着などにより徒手的整復が困難な場合が多いため, 治療法として観血的整復法が選択される。今回われわれは, 徒手的整復が不可能であった両側陳旧性顎関節前方脱臼症例に対し, 顎関節鏡視下剥離授動術を併用した徒手的整復術を行うことにより, 整復し得た症例を経験したので報告した。症例は83歳女性, 2001年10月10日閉口障害および顎関節部疼痛を自覚し近医整形外科を受診した。その際両側性前方顎関節脱臼の診断のもと徒的整復術が施行されたが, その後も咬合の改善を認めなかった。その約1か月後近歯科を受診した際にも徒手的整復術が施行されたが, 整復不可能であり, 翌日当科...

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Published inJournal of the Japanese Society for the Temporomandibular Joint Vol. 15; no. 1; pp. 29 - 32
Main Authors 田部, 眞治, 佐々木, 秀和, 藤田, 宏人, 竹中, 暁恵, 松田, 秀司, 吉村, 安郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2003
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
Subjects
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu1989.15.29

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Summary:陳旧性顎関節前方脱臼では, 線維性癒着などにより徒手的整復が困難な場合が多いため, 治療法として観血的整復法が選択される。今回われわれは, 徒手的整復が不可能であった両側陳旧性顎関節前方脱臼症例に対し, 顎関節鏡視下剥離授動術を併用した徒手的整復術を行うことにより, 整復し得た症例を経験したので報告した。症例は83歳女性, 2001年10月10日閉口障害および顎関節部疼痛を自覚し近医整形外科を受診した。その際両側性前方顎関節脱臼の診断のもと徒的整復術が施行されたが, その後も咬合の改善を認めなかった。その約1か月後近歯科を受診した際にも徒手的整復術が施行されたが, 整復不可能であり, 翌日当科紹介となった。当科にて静脈内鎮静下および顎関節部局所麻酔下にて徒手的整復術を施行するも整復不可能であった。そのため全身麻酔下にて顎関節鏡視下剥離授動術を施行し, 線維性癒着病変を剥離することにより徒手的整復が可能となった。以上より, 徒手的整復が困難な陳旧性顎関節脱臼に対し, 必要な画像検査を行い, 上関節腔内の線維性癒着病変の存在が推察された場合, 顎関節鏡視下剥離授動術にてそれらを剥離し, 徒手的整復術を行うことが有用であることがわかった。また, 従来行われてきた観血的整復法と比較し, 本療法は外科的侵襲が少なく, 審美性に優れ, 顎機能の回復が可能であり, 陳旧性顎関節脱臼に対しても有用であった。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.15.29