妄想を伴う余剰幻肢を呈した右被殻出血の 1 例

症例は 64 歳, 女性, 右利き。慢性腎不全のため透析治療を受けていたが, 左半身脱力のため緊急入院した。CT では右被殻に出血巣を認めた。神経学的には重度の左片麻痺と感覚障害, 神経心理学的には重度の左半側空間無視を呈した。第 7 病日以降, 麻痺した左腕の他にもう 1 本腕があるが, それは体から取れてしまったという妄想的な内容の余剰幻肢を呈すようになった。第 27 病日, 幻肢は左肩から伸びていると報告され, 第 32 病日, 麻痺肢の運動機能が改善すると同時に消失した。本例の余剰幻肢は, 重度の感覚障害を背景に生じた可能性が考えられた。さらに, 右前頭葉による信念の妥当性を評価する能...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 42; no. 3; pp. 390 - 397
Main Authors 千葉, 朋子, 佐藤, 睦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 30.09.2022
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.42.390

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Summary:症例は 64 歳, 女性, 右利き。慢性腎不全のため透析治療を受けていたが, 左半身脱力のため緊急入院した。CT では右被殻に出血巣を認めた。神経学的には重度の左片麻痺と感覚障害, 神経心理学的には重度の左半側空間無視を呈した。第 7 病日以降, 麻痺した左腕の他にもう 1 本腕があるが, それは体から取れてしまったという妄想的な内容の余剰幻肢を呈すようになった。第 27 病日, 幻肢は左肩から伸びていると報告され, 第 32 病日, 麻痺肢の運動機能が改善すると同時に消失した。本例の余剰幻肢は, 重度の感覚障害を背景に生じた可能性が考えられた。さらに, 右前頭葉による信念の妥当性を評価する能力が損なわれた状況で, 保たれた左半球が幻肢に対してさまざまな誤った意味づけをしたために, 幻肢が妄想的に語られたものと推測された。また, 妄想内容は, 透析への抵抗感や片麻痺に対する否認などの心理的要因に影響されている可能性が考えられた。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.42.390