両側同時性顔面神経麻痺をきたしたサルコイドーシス疑いの1例

今回,両側同時性顔面神経麻痺を発症し,臨床経過からサルコイドーシスを疑う症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。症例は50歳,男性。前日からの右側の顔の動かしにくさを主訴に前医を受診し,重度のベル麻痺と診断され,前医にてステロイド漸減療法が開始された。発症7日目に左側の顔面神経麻痺も出現し,両側同時性顔面神経麻痺となった事から全身性疾患の疑いもあり,発症9日目に当科に転院となった。複数科での精査後,確定診断には至らなかったが,サルコイドーシスによる顔面神経麻痺を最も強く疑い,サルコイドーシスに準じたステロイド治療に移行した。治療開始5ヵ月後,両側の麻痺は改善傾向であり,今後もステロイド治...

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Published in日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 Vol. 2; no. 4; pp. 197 - 202
Main Authors 西田, 壮志, 山本, 圭佑, 高野, 賢一, 角木, 拓也, 實川, 純人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 2022
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ISSN2435-7952
DOI10.24805/jiaio.2.4_197

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Summary:今回,両側同時性顔面神経麻痺を発症し,臨床経過からサルコイドーシスを疑う症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。症例は50歳,男性。前日からの右側の顔の動かしにくさを主訴に前医を受診し,重度のベル麻痺と診断され,前医にてステロイド漸減療法が開始された。発症7日目に左側の顔面神経麻痺も出現し,両側同時性顔面神経麻痺となった事から全身性疾患の疑いもあり,発症9日目に当科に転院となった。複数科での精査後,確定診断には至らなかったが,サルコイドーシスによる顔面神経麻痺を最も強く疑い,サルコイドーシスに準じたステロイド治療に移行した。治療開始5ヵ月後,両側の麻痺は改善傾向であり,今後もステロイド治療継続の方針である。顔面神経麻痺は日常疾患でよく遭遇する疾患であるが,両側性顔面神経麻痺は顔面神経麻痺全体の5%程度と稀である。両側性顔面神経麻痺は全身性疾患の一症状として認められることがあり,発症時期により同時性,交代性,再発性に分類され,特に本症例のような同時性の麻痺では全身性疾患の頻度が高いとされている。両側性顔面神経麻痺の鑑別疾患の1つにサルコイドーシスがある。サルコイドーシスの内,約5%には神経病変を認め,神経サルコイドーシスといわれており顔面神経麻痺をきたすことが多い。顔面神経麻痺をきたす疾患としてサルコイドーシスは考慮すべき疾患であり,念頭に置いて診察し,迅速な精査を進める必要がある。
ISSN:2435-7952
DOI:10.24805/jiaio.2.4_197