HLA遺伝子多型によるスギ花粉舌下免疫療法の応答性を予測する薬理遺伝学的検討

スギ花粉症は近年増加傾向にあり,舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)は唯一の根治治療として注目されているが,長期治療にも関わらず効果が乏しい症例が一定数存在するため,SLIT開始時に応答性を予測するバイオマーカーの開発が望まれている。スギ花粉抗原ペプチドCry j 1はHLA class II遺伝子領域に結合することが判明しており,今回,薬理遺伝学的な視点からHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作・SLIT応答性との関連を検討した。まず,学生コホート544例を対象としてHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作について分析したところ,HLA-DPB1*05:01がスギ花...

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Published in日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 Vol. 2; no. 4; pp. 137 - 139
Main Author 木戸口, 正典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 2022
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ISSN2435-7952
DOI10.24805/jiaio.2.4_137

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Summary:スギ花粉症は近年増加傾向にあり,舌下免疫療法(sublingual immunotherapy: SLIT)は唯一の根治治療として注目されているが,長期治療にも関わらず効果が乏しい症例が一定数存在するため,SLIT開始時に応答性を予測するバイオマーカーの開発が望まれている。スギ花粉抗原ペプチドCry j 1はHLA class II遺伝子領域に結合することが判明しており,今回,薬理遺伝学的な視点からHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作・SLIT応答性との関連を検討した。まず,学生コホート544例を対象としてHLA遺伝子多型とスギ花粉の感作について分析したところ,HLA-DPB1*05:01がスギ花粉に易感作を示した。次に,スギ花粉SLIT患者203例を対象としてHLA遺伝子多型とSLITへの応答性を分析したところ,HLA-DPB1*05:01を保有するスギ花粉症患者は保有しない患者と比較してSLITに対する不応性が確認された。これらは,Cry j 1結合ポケットであるHLA-DPβ1のアミノ酸による立体構造的変化とそれぞれ関与していた。さらに,実臨床での応用を前提として遺伝子多型に特異的な一塩基多型(tag SNP)を同定し,従来のHLA遺伝子決定法より簡便に安価で検査可能な方法を確立した。HLA遺伝子多型がSLITの薬理遺伝学的バイオマーカーとなる可能性が示唆された。
ISSN:2435-7952
DOI:10.24805/jiaio.2.4_137