劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症機序 ―菌の免疫回避機構と菌の特性

劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome)は,1987 年に米国で最初に報告され,日本においても1992 年に典型的な症例が報告されている.現在までに500 人を超える患者が確認され,このうち約40%が死亡しているというきわめて致死率の高い感染症である.病理学的所見から,感染部位において菌の集積はあるが,多核白血球の浸潤が見られないことから,宿主防御の撹乱が劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症機序に重要であることが考えられた.そこで多核白血球に対する作用を調べた結果,劇症型感染症を引き起こした株は,少なくとも2 つの方法によって,多核白血...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 83; no. 5; pp. 485 - 489
Main Authors 渡辺, 治雄, 阿戸, 学, 小林, 和夫, 池辺, 忠義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.09.2009
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi.83.485

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Summary:劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome)は,1987 年に米国で最初に報告され,日本においても1992 年に典型的な症例が報告されている.現在までに500 人を超える患者が確認され,このうち約40%が死亡しているというきわめて致死率の高い感染症である.病理学的所見から,感染部位において菌の集積はあるが,多核白血球の浸潤が見られないことから,宿主防御の撹乱が劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症機序に重要であることが考えられた.そこで多核白血球に対する作用を調べた結果,劇症型感染症を引き起こした株は,少なくとも2 つの方法によって,多核白血球の機能を阻害していることが判明した.1 つは,ストレプトリジンO による多核白血球のネクローシス,もう1 つは,セリンプロテアーゼであるScpC によりIL-8 を切断することで多核白血球の遊走能を阻害することである.これらの因子をコードする遺伝子の発現は,劇症型感染症を引き起こした株で増大しており,この発現の上昇は,二成分制御系のcsrS 遺伝子の変異によるものであった.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.83.485