PCR-ribotype 027株によるClostridioides difficile感染症アウトブレイクの経験

日本では,Clostridioides difficile PCR-ribotype 027(RT027)の分離率は低い.私たちは,日本の地域の中核病院で発生したRT027によるアウトブレイクを経験したので報告する.2019年2月から6月末までに,当院の一病棟(A病棟)で18例の新しいC. difficile感染症(CDI)患者が認められた.アウトブレイクがピークとなった3月のCDI発生率は,69.9/10.000 patient-daysであった.18患者のうち,11患者(12エピソード)で菌株解析が可能であり12菌株すべてがRT027と同定された.一方,A病棟以外に入院したCDI患者からは...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 38; no. 3; pp. 90 - 98
Main Authors 加藤, はる, 藤本, 裕子, 今井, 清隆, 長谷川, 香織, 吉盛, 奈津美, 一幡, 結, 具, 芳明, 妹尾, 充敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.05.2023
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ISSN1882-532X
1883-2407
DOI10.4058/jsei.38.90

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Summary:日本では,Clostridioides difficile PCR-ribotype 027(RT027)の分離率は低い.私たちは,日本の地域の中核病院で発生したRT027によるアウトブレイクを経験したので報告する.2019年2月から6月末までに,当院の一病棟(A病棟)で18例の新しいC. difficile感染症(CDI)患者が認められた.アウトブレイクがピークとなった3月のCDI発生率は,69.9/10.000 patient-daysであった.18患者のうち,11患者(12エピソード)で菌株解析が可能であり12菌株すべてがRT027と同定された.一方,A病棟以外に入院したCDI患者からはRT027は分離されなかったことから,RT027によるアウトブレイクはA病棟に限局していたことが明らかとなった.基本的な感染対策の徹底により,7月よりA病棟でのCDI発生率は減少し,同時にRT027は分離されなくなった.調べた12株のRT027株はすべてガチフロキサシンおよびモキシフロキサシンに感性であり,本アウトブレイク株は,欧米でアウトブレイク流行株RT027としては報告されてこなかった,フルオロキノロン感性RT027株であった.日本での,RT027株の疫学や臨床的重要性については,今後の検討が必要である.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.38.90