小児急性上部尿路感染症の初期治療におけるセファゾリンの有効性と原因菌に対する抗菌薬感受性に関する検討

小児急性上部尿路感染症は特に乳幼児や新生児では敗血症を伴うことがあり,初期治療において有効性の高い抗菌薬を選択する必要がある.しかし,第三世代セフェム系抗菌薬,カルバペネム系抗菌薬などを頻用することは耐性菌の出現や増加を惹起する可能性がある.症例の重症度や施設の違いなどによりさまざまな種類の抗菌薬が使用され,それぞれの抗菌薬ごとに有効性が検討された報告は少ないが,当院では初発の小児急性上部尿路感染症に対する初期治療の第一選択薬として第一世代セフェム系抗菌薬であるセファゾリン(CEZ)を用いており,その有効性に関して検討を行った.今回の検討では,CEZ が適応となる菌が88.9%の症例で検出され...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 84; no. 3; pp. 269 - 275
Main Authors 村山, 純一郎, 星野, 顕宏, 冨家, 俊弥, 阿部, 祥英, 吉田, 耕一郎, 板橋, 家頭夫, 酒井, 菜穂, 大戸, 秀恭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.05.2010
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi.84.269

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Summary:小児急性上部尿路感染症は特に乳幼児や新生児では敗血症を伴うことがあり,初期治療において有効性の高い抗菌薬を選択する必要がある.しかし,第三世代セフェム系抗菌薬,カルバペネム系抗菌薬などを頻用することは耐性菌の出現や増加を惹起する可能性がある.症例の重症度や施設の違いなどによりさまざまな種類の抗菌薬が使用され,それぞれの抗菌薬ごとに有効性が検討された報告は少ないが,当院では初発の小児急性上部尿路感染症に対する初期治療の第一選択薬として第一世代セフェム系抗菌薬であるセファゾリン(CEZ)を用いており,その有効性に関して検討を行った.今回の検討では,CEZ が適応となる菌が88.9%の症例で検出され,CEZ の有効率は91.3%,尿培養陰性化率は97.2%と良好であった.Escherichia coli に対する抗菌薬感受性はCEZ においてMIC<4 が90.9%,セフタジジム(CAZ)はMIC<1 が93.9%,アンピシリン(ABPC)はMIC<4 が63.6%,ゲンタマイシン(GM)はMIC<4 が81.8%であり,第一世代のセフェム系抗菌薬であるCEZ が第三世代のセフェム系抗菌薬CAZ とほぼ同等の有効性を有していることが示唆された.よって,小児急性上部尿路感染症の初期抗菌薬治療としてCEZ は細菌学的臨床効果の観点から選択薬の一つになりうると判断された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi.84.269