脳血液灌流量の変化が光温熱数値シミュレーションの温度分布推定に及ぼす影響

レーザを用いた光温熱治療は,光学・伝熱学に基づく新しい治療法で,近年臨床でも用いられるようになってきた.生体組織と腫瘍には熱感受性の違いを用いて,正常組織をできるだけ温存する,低侵襲な治療法である.脳腫瘍の治療では,頭蓋骨に小孔を空け,レーザプローブでレーザを印加する.腫瘍組織を42度程度に加温することで,腫瘍細胞を機能的細胞死させる.光温熱治療は,光伝搬・熱伝導によって加温領域が決まるが,それぞれの物理現象は放物型の偏微分方程式で表すことが出来る.それらを解くことで,術前に生体内の温度分布を予測し,その結果安全で効果的な治療に貢献出来る.我々は先行研究として,光吸収にかかわるパラメータである...

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Published in生体医工学 Vol. Annual58; no. Abstract; p. 377
Main Authors 鷲尾, 利克, 黒田, 輝, 荒船, 龍彦, 鈴木, 志歩, 松前, 光紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2020
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual58.377

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Summary:レーザを用いた光温熱治療は,光学・伝熱学に基づく新しい治療法で,近年臨床でも用いられるようになってきた.生体組織と腫瘍には熱感受性の違いを用いて,正常組織をできるだけ温存する,低侵襲な治療法である.脳腫瘍の治療では,頭蓋骨に小孔を空け,レーザプローブでレーザを印加する.腫瘍組織を42度程度に加温することで,腫瘍細胞を機能的細胞死させる.光温熱治療は,光伝搬・熱伝導によって加温領域が決まるが,それぞれの物理現象は放物型の偏微分方程式で表すことが出来る.それらを解くことで,術前に生体内の温度分布を予測し,その結果安全で効果的な治療に貢献出来る.我々は先行研究として,光吸収にかかわるパラメータである光学特性値が温度分布に与える影響を検討した(鈴木志歩 et al, LIFE2019 (2019.9) :2-3-1-3).本治療法の課題は,血液による熱の持ち去りによる温度低下である.一般に生体内の温度が上昇することで,血液灌流量が増加することが知られている(岡山医学会雑誌 100.5-6 (1988): 655-667).レーザ印加は局所的な体内温度の上昇を生じさせ,血液灌流量の増加をこれまでとは異なる状況で引き起こすことが予想される.つまり,血液による熱の持ち去りは複雑となり生体内の温度分布の把握は困難になると考えられる.本研究ではこの点を鑑み,光温熱治療の数値シミュレーションを用いて,血液灌流量の変化による生体内温度分布の差異を検討し,報告する.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual58.377