非一様弾性場・非定住遊走による間葉系幹細胞のエクササイズ培養:機構と効果

間葉系幹細胞(MSC)の細胞製剤としての治療有効性は、その幹細胞性の保持と強く関わる。一方、MSCの幹細胞性は培養力学場の強度と経験時間を履歴に影響を受け容易に変質するため、治療有効性の保証のためにはMSCの幹細胞性を保持する培養力学場設計が重要となる。この問題に対して我々はこれまでに、三角形の硬領域を軟ベースゲルに非一様に刻み込んだ基材上でMSCに非定住遊走させることで、力学場履歴の蓄積を回避し系統偏向をブロックする培養系の構築を試みてきた。この培養系には、MSCのDurotaxisによる硬領域への蓄積を回避するためReverse durotaxisを誘導する仕組みを導入するとともに、硬軟領...

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Published in生体医工学 Vol. Annual58; no. Abstract; p. 221
Main Authors 江端, 宏之, 辻, ゆきえ, 金城, 美咲, 草川, 森士, 木戸秋, 悟, 澤田, 留美, 久保木, タッサニーヤー, 田中, 和紗, 河野, 健
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2020
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual58.221

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Summary:間葉系幹細胞(MSC)の細胞製剤としての治療有効性は、その幹細胞性の保持と強く関わる。一方、MSCの幹細胞性は培養力学場の強度と経験時間を履歴に影響を受け容易に変質するため、治療有効性の保証のためにはMSCの幹細胞性を保持する培養力学場設計が重要となる。この問題に対して我々はこれまでに、三角形の硬領域を軟ベースゲルに非一様に刻み込んだ基材上でMSCに非定住遊走させることで、力学場履歴の蓄積を回避し系統偏向をブロックする培養系の構築を試みてきた。この培養系には、MSCのDurotaxisによる硬領域への蓄積を回避するためReverse durotaxisを誘導する仕組みを導入するとともに、硬軟領域間を移動する際、YAP/TAZの細胞核―細胞質シャトリングを持続させる設計を施している。この系で培養されたMSCの網羅的遺伝子発現解析から、細胞の生存、増殖、運動に関わる遺伝子群の発現上昇が顕著となるとともに、Wntシグナルのコア因子の一つであるAPCの発現が最大となることが見出され、MSCの活力と幹細胞性を総じて高める効果が見られたことからこの培養をエクササイズ培養と名付けた。本講演ではこのエクササイズ効果が生成するメカニズムとして細胞核の力学的挙動の役割を議論し、エクササイズ培養されたMSCの幹細胞性について報告する。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual58.221