ヒツジの輸送時における福祉とその評価

本報は, 1990年以降の比較的新しいヒツジ輸送の研究から, 輸送の影響およびその評価指標についてまとめ, 提供することを目的とした。輸送時に負荷されるストレスは, 1) 身体的ストレス, 2) 生理的ストレス, 3) 心理的ストレスの3つに分類されている。身体的ストレスは, 積み込みや積み下ろし, 輸送時の姿勢定位, バランスの保持による疲労を示しており, 生理的スドレスは, 飢餓や脱水, 怪我や疾病, 動物の体温および生理的働きによる反作用を示しており, 心理的ストレスは, 動物の感覚器により知覚されるストレスや摂食・飲水願望を示している。これらのストレスを計測する指標として, 行動や生理...

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Published in日本緬羊研究会誌 Vol. 2008; no. 45; pp. 20 - 29
Main Authors 江口, 祐輔, 田中, 智夫, 植竹, 勝治, 菅原, 静人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本緬羊研究会 20.12.2008
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ISSN0389-1305
2186-1013
DOI10.11595/jpnjsheepsci1964.2008.20

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Summary:本報は, 1990年以降の比較的新しいヒツジ輸送の研究から, 輸送の影響およびその評価指標についてまとめ, 提供することを目的とした。輸送時に負荷されるストレスは, 1) 身体的ストレス, 2) 生理的ストレス, 3) 心理的ストレスの3つに分類されている。身体的ストレスは, 積み込みや積み下ろし, 輸送時の姿勢定位, バランスの保持による疲労を示しており, 生理的スドレスは, 飢餓や脱水, 怪我や疾病, 動物の体温および生理的働きによる反作用を示しており, 心理的ストレスは, 動物の感覚器により知覚されるストレスや摂食・飲水願望を示している。これらのストレスを計測する指標として, 行動や生理指標が使用されている。血中クレアチンキナーゼ (CK) 濃度と血中乳酸濃度は疲労を表す指標として, 体重の減少, 血漿グルコース濃度, 血漿遊離脂肪酸濃度, 血漿尿素濃度, 血漿β-ヒドロキシ酪酸濃度, 血中総タンパク質濃度, 血中アルブミン濃度, 血中血球容積 (PCV), 血中重量オスモル濃度は飢餓や脱水を表す指標として, 心拍数の増加, 血中へのカテコールアミンおよびコルチゾールの放出量増加は動物の抗ストレス反応を表す指標として用いられている。また, 血漿遊離脂肪酸濃度と血中グルコース濃度は, 抗ストレス反応を表す指標としても用いられる。今後, 日本においても, 国内の地理的および気候的特徴とともにこれらの項目について, 広く輸送時のヒツジへの影響を調査することで, 家畜福祉性の改善と具現化を目指した国内における規則の作成が必要であると考える。
ISSN:0389-1305
2186-1013
DOI:10.11595/jpnjsheepsci1964.2008.20