Mahaim束を介する反方向性房室回帰性頻拍に対し, non-contact mapping systemを用いカテーテルアブレーションを行った1例
Mahaim束は, 反方向性房室回帰性頻拍 (antidromic AVRT) の順伝導として頻拍回路となりうるほか, 自動能に伴う頻拍を呈したり, 心房細動や房室結節回帰性頻拍などのbystanderとして頻拍にかかわり, 心電学的, 電気生理学的に多くの検討がなされてきた. 高周波カテーテルアブレーション (RFCA) の対象として, 多くのマッピング方法が報告されている1) 2). 今回, 完全内臓逆位に合併したMahaim束を介するantidromic AVRT症例を経験し, noncontact mapping system (NCM) を用いて心室端のアブレーションに成功した....
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Published in | Shinzo Vol. 41; no. SUPPL.4; pp. S4_41 - S4_42 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
2009
Japan Heart Foundation |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo.41.S4_41 |
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Summary: | Mahaim束は, 反方向性房室回帰性頻拍 (antidromic AVRT) の順伝導として頻拍回路となりうるほか, 自動能に伴う頻拍を呈したり, 心房細動や房室結節回帰性頻拍などのbystanderとして頻拍にかかわり, 心電学的, 電気生理学的に多くの検討がなされてきた. 高周波カテーテルアブレーション (RFCA) の対象として, 多くのマッピング方法が報告されている1) 2). 今回, 完全内臓逆位に合併したMahaim束を介するantidromic AVRT症例を経験し, noncontact mapping system (NCM) を用いて心室端のアブレーションに成功した. 症例は31歳, 男性で完全内臓逆位がある. 洞調律時心電図にΔ波を認めず. 170/分の頻拍時心電図では, QRS波は洞調律中のそれに類似するものの幅は130msと延長していた. 心臓電気生理学的検査を施行. 心房連続刺激では, 刺激周期の短縮に伴い (600~400ms) 刺激-V時間が延長したが, H-V時間は短縮し, QRS波形は徐々に変化した. 刺激周期を320msまで短縮したところ, 刺激-V時間はさらに延長しHis波はQRS波内に埋没し, QRS幅の広い頻拍が誘発された. 頻拍中の心房興奮順序は, 逆行性房室結節伝導路と同一であった. 頻拍中, 右室心尖部ではQRS波に先行する心室電位が記録され, また頻拍中の心房中隔領域の不応期に加えた心房単回刺激は, 心室およびそれに続く心房波をリセットした. 以上の所見から, 本頻拍を, 減衰伝導特性をもつ房室結節以外の順行性伝導, すなわちMahaim束を順伝導に, 房室結節伝導路を逆伝導にもつantidromic AVRTと診断した. 三尖弁輪を詳細にマッピングしたが, いわゆるMahaim電位は記録されず, 心房端ではなく心室端でのRFCAを行うこととした. 右室心尖部へmulti-electrode array (MEA) を挿入し, noncontact mapping system (NMC) を用い頻拍中のマッピングを行った. 頻拍はカテーテル操作などの過程で, QRS波形が徐々に上方軸から下方軸へと変化し, それぞれのQRS波形に一致する最早期部位がNCMにて記録されたが, 最終的に最も下方軸の波形の頻拍のみが持続した. 同部位に通電を行い頻拍は停止した. 以後, 頻拍は誘発されず, 術後12カ月頻拍発作の出現なく経過している. NCMを用いたMahaim束心室端のマッピングおよびRFCAは, これまでに1例のみ報告されている3). 今回のわれわれの症例により, NCMは, 複数の心室端を捉えうることが示され, Mahaim束の走行を検討する上でも有効かつ興味深いツールであると考えられた. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo.41.S4_41 |