歯頸部辺縁のエナメル質ならびに歯根象牙質における脱灰-再石灰化反応

歯頸部辺縁のエナメル質ならびに歯根象牙質試料を用いて脱灰-再石灰化反応を検討した。試料には10歳代ならびに50歳代の小臼歯各10例に由来する近遠心隣接面を用いた。脱灰-再石灰化反応は,脱灰-再石灰化-脱灰-再石灰化-脱灰の各条件をそれぞれ24時間サイクルで行った。評価にはマイクロラジオグラフを用いて,表層より脱灰底部までの深さ,さらに脱灰-再石灰化層のミネラル量について評価を行った。エナメル質試料,歯根象牙質試料の脱灰深度は,いずれの年齢群ともに近遠心隣接面別には有意の差は認められなかった。50歳代の歯根象牙質試料の脱灰深度は最も深く,約150μmであり,10歳代の同じ試料に比較して有意の差(...

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Published inJOURNAL OF DENTAL HEALTH Vol. 46; no. 3; pp. 290 - 296
Main Authors 高木, 興氏, 飯島, 洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 口腔衛生学会 1996
Japanese Society for Oral Health
Subjects
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ISSN0023-2831
2189-7379
DOI10.5834/jdh.46.3_290

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Summary:歯頸部辺縁のエナメル質ならびに歯根象牙質試料を用いて脱灰-再石灰化反応を検討した。試料には10歳代ならびに50歳代の小臼歯各10例に由来する近遠心隣接面を用いた。脱灰-再石灰化反応は,脱灰-再石灰化-脱灰-再石灰化-脱灰の各条件をそれぞれ24時間サイクルで行った。評価にはマイクロラジオグラフを用いて,表層より脱灰底部までの深さ,さらに脱灰-再石灰化層のミネラル量について評価を行った。エナメル質試料,歯根象牙質試料の脱灰深度は,いずれの年齢群ともに近遠心隣接面別には有意の差は認められなかった。50歳代の歯根象牙質試料の脱灰深度は最も深く,約150μmであり,10歳代の同じ試料に比較して有意の差(p<0.01)を示した。エナメル質試料はそのミネラル分布からいずれの年齢群ともに,主に1層の厚い表層下脱灰像を示したが,10歳代のエナメル質試料の4例にのみ2層の再石灰化像が確認された。歯根象牙質試料の場合はいずれの年齢群ともに,セメント質と象牙質に1層づつ計2層の再石灰化像が認められた。10歳代は3例,50歳代は2例と少数例ではあるが,セメント質に"hyperremineralization"を示す例も認められ,最表層のミネラル量の最大値は60-70vol%を示した。脱灰-再石灰化期間のバランスを1:1の比で繰り返すことにより,エナメル質に厚い表層を有する表層下脱灰病変が形成される傾向にあることが示唆された。再石灰化を通じて形成されたエナメル質や歯根象牙質は耐酸性の性状を有することを考慮すると,再石灰化処置法にとってこの所見は臨床的にも重要であった。
ISSN:0023-2831
2189-7379
DOI:10.5834/jdh.46.3_290