脳血管性痴呆とアルツハイマー型痴呆高齢者の受療における介護者の認識

目的:痴呆性高齢者の受療における課題を検討するため,アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆高齢者の介護者の受療に関する認識と痴呆性疾患による認識の相違や共通点の特徴を明らかにし,検討することを目的とする.方法:対象は在宅生活をしている痴呆性高齢者の介護者で研究協力の得られた高齢者とし,訪問による半構成面接を行った.対象者の了解を得てテープ録音し,逐語録を作成しデータとした.データの分析は受療に関して話されたエピソードを抽出しコード化をし,さらに相違と類似を検討し,アルツハイマー型痴呆(ATD)高齢者と脳血管性痴呆(VD)高齢者に分けて認識をカテゴリー化し,その特徴を比較検討した.結果分析の妥当性に...

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Published in日本地域看護学会誌 Vol. 3; no. 1; pp. 108 - 114
Main Authors 佐伯, 和子, 和泉, 比佐子, 加藤, 欣子, 平野, 憲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本地域看護学会 2001
Japan Academy of Community Health Nursing
Subjects
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ISSN1346-9657
2432-0803
DOI10.20746/jachn.3.1_108

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Summary:目的:痴呆性高齢者の受療における課題を検討するため,アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆高齢者の介護者の受療に関する認識と痴呆性疾患による認識の相違や共通点の特徴を明らかにし,検討することを目的とする.方法:対象は在宅生活をしている痴呆性高齢者の介護者で研究協力の得られた高齢者とし,訪問による半構成面接を行った.対象者の了解を得てテープ録音し,逐語録を作成しデータとした.データの分析は受療に関して話されたエピソードを抽出しコード化をし,さらに相違と類似を検討し,アルツハイマー型痴呆(ATD)高齢者と脳血管性痴呆(VD)高齢者に分けて認識をカテゴリー化し,その特徴を比較検討した.結果分析の妥当性については共同研究者間で検討した.結果:痴呆性高齢者を介護する介護者は,受療に関する様々な認識に,(1)被介護者の受診の困難性,(2)受療の目的,(3)医師の治療方針,(4)同伴通院,(5)入院経験の評価,(6)急性症状の対応,(7)家族に対する医師の対応,(8)家族の医師に対する疑問やニーズ,(9)老人性痴呆疾患センター受診の意味,の9つの側面がみられた.その中でATD高齢者とVD高齢者の介護者の認識に相違と共通点の特徴がみられた.相違の特徴の主なものは,第一に,被介護者の受診の困難には,ATD高齢者の介護者は刺激が多い医療機関に入ってからの対応に困難を感じ,VD高齢者の介護者は受診前の準備に困難を示していた.第二に,ATD高齢者の介護者は受療目的や医師の治療を,痴呆の進行の確認や,また医療機関とのつながりを確保する機会として認識し,VD高齢者の介護者は基礎疾患の治療,管理として認識していた.第三に,入院が与える被介護者への影響として,ATD高齢者の介護者は認知機能の低下,VD高齢者の介護者は身体的機能の低下を認識していた.第四に,医師の介護者への対応では,ATD高齢者の介護者ば医師から労いやサービス利用の情報を提供され,VD高齢者の介護者は治療協力者の期待をかけられているとみていた.ニーズでは,ATD介護者は医師に介護の生活の理解や相談対応と,被介護者のプライドを配慮した診察を求め,VD介護者は基礎疾患のケアの情報と同時に痴呆性疾患についても相談対応を求めていた.共通点では,入院や急性症状の対応の困難性が見られた.これら介護者の認識から出てきた9つの側面とその認識の内容からは,1)受療における介護者の困難とそのニーズの理解,2)介護者との十分な相談,3)急性症状に対応等,主な課題が浮き彫りになり,これらの検討が痴呆性高齢者との在宅生活を支えていく上でも重要であると考える.
ISSN:1346-9657
2432-0803
DOI:10.20746/jachn.3.1_108