開口障害と両側性の臼歯部開咬を認め顎関節疾患との鑑別に苦慮した咀嚼筋間隙膿瘍の1例

患者は71歳の女性で,10日前の感染根管治療後から開口障害が生じ,右側顎関節部疼痛および咬合異常を主訴として来院した。初診時の自力最大開口距離は25 mmで,開口時の関節雑音は認められなかった。また,両側性の臼歯部開咬が認められたが,口腔内外に明らかな炎症所見を認めなかった。顎関節症以外の顎関節疾患を疑ったが,2日後のMRI検査で右側関節突起の内側に膿瘍形成を疑わせる所見が認められ,血液検査ではWBCおよびCRPが高値を示していたため,咀嚼筋間隙膿瘍を疑い,CDTR-PIを処方し,外来で経過観察を行うことにした。3日後の再診時に軽度の熱感を訴えたため,CTRXの経静脈投与を追加したが,その2日...

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Published inJournal of the Japanese Society for the Temporomandibular Joint Vol. 28; no. 2; pp. 144 - 150
Main Authors 大西, 祐一, 覚道, 健治, 渡辺, 昌広, 窪, 寛仁, 伊達岡, 聖, 杉立, 光史, 本橋, 具和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2016
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
Subjects
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.28.144

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Summary:患者は71歳の女性で,10日前の感染根管治療後から開口障害が生じ,右側顎関節部疼痛および咬合異常を主訴として来院した。初診時の自力最大開口距離は25 mmで,開口時の関節雑音は認められなかった。また,両側性の臼歯部開咬が認められたが,口腔内外に明らかな炎症所見を認めなかった。顎関節症以外の顎関節疾患を疑ったが,2日後のMRI検査で右側関節突起の内側に膿瘍形成を疑わせる所見が認められ,血液検査ではWBCおよびCRPが高値を示していたため,咀嚼筋間隙膿瘍を疑い,CDTR-PIを処方し,外来で経過観察を行うことにした。3日後の再診時に軽度の熱感を訴えたため,CTRXの経静脈投与を追加したが,その2日後の血液検査で炎症が増悪していたので緊急入院させ,同日からCLDMとPIPCを投与した。口腔内からの試験穿刺で粘稠な帯黄色の膿が認められたため,切開排膿術を施行し,その後は連日,切開部からの洗浄処置を行い,入院14日目に軽快退院となった。退院時,わずかな臼歯部開咬と右側顎関節部疼痛が残存していたが,退院後1か月で開口距離は38 mmに改善し,咬合異常も消失していた。現在も定期的な経過観察を行っているが,炎症の再燃は認めない。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.28.144