成人Still病に併発した顎関節症状に対する治療経験
成人Still病は,39℃以上の発熱や関節炎などの強い炎症を引き起こす全身性の自己炎症性疾患である。患者は38歳の日本人女性で,この既往があり,開口制限を主訴に当科を受診した。初診時,両側顎関節部の開口時痛に伴う開口障害を認め,自力最大開口量は23 mmであり,前・側方の下顎滑走運動は不良であった。パノラマエックス線およびMRI所見にて,両側性に下顎頭吸収と非復位性顎関節円板前方転位を認め,前歯部から側方歯にかけて一部開咬を呈していた。患者は,成人Still病を18歳時に発症し,主に両側肩関節圧痛や手指関節拘縮などの関節症状を繰り返していたが,受診時点では全身的な活動性は低下しており,寛解状態...
Saved in:
Published in | Journal of the Japanese Society for the Temporomandibular Joint Vol. 30; no. 2; pp. 202 - 207 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本顎関節学会
20.08.2018
The Japanese Society for Temporomandibular Joint |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-3004 1884-4308 |
DOI | 10.11246/gakukansetsu.30.202 |
Cover
Summary: | 成人Still病は,39℃以上の発熱や関節炎などの強い炎症を引き起こす全身性の自己炎症性疾患である。患者は38歳の日本人女性で,この既往があり,開口制限を主訴に当科を受診した。初診時,両側顎関節部の開口時痛に伴う開口障害を認め,自力最大開口量は23 mmであり,前・側方の下顎滑走運動は不良であった。パノラマエックス線およびMRI所見にて,両側性に下顎頭吸収と非復位性顎関節円板前方転位を認め,前歯部から側方歯にかけて一部開咬を呈していた。患者は,成人Still病を18歳時に発症し,主に両側肩関節圧痛や手指関節拘縮などの関節症状を繰り返していたが,受診時点では全身的な活動性は低下しており,寛解状態にあったと考える。以上より,成人Still病を病態基盤とする非復位性顎関節円板障害および変形性顎関節症と診断した。疼痛には,原疾患に対して服用中であったトラマドール/アセトアミノフェンを用いながら,母親の支援下で開口訓練を実施することで,当初の開口制限は自力最大開口量42 mmまで改善した。初診より5か月後にはクリックが出現し,顎関節円板の開口時復位が示唆されたため,前方転位した円板の整位を目的とした運動療法に切り換え,疼痛も軽減し開口域も維持できた。観察期間中,全身状態が悪化したため訓練が中断となり,3年後の再診時には開口制限が再燃していた。成人Still病を背景とする顎関節症の治療を経験するとともに,開口訓練の有用性が示唆された。 |
---|---|
ISSN: | 0915-3004 1884-4308 |
DOI: | 10.11246/gakukansetsu.30.202 |