上顎智歯周囲炎に起因した慢性翼突筋炎が原因と考えられた重度開口障害の1例

上顎智歯周囲炎に起因した慢性翼突筋炎が原因と考えられた重度開口障害の1例を経験したので,その概要を報告する。患者は69歳の男性で,約5年前より開口障害を自覚するも放置していた。2年前より某総合病院歯科口腔外科で顎関節強直症と診断され,開口訓練が行われていたが,症状の改善が得られず当科へ紹介され受診となった。初診時,最大開口量は5 mm,強制開口量は6 mmと重度の開口障害を認めた。X線写真では下顎頭の形態は正常であったが,CTおよびMRIで内側翼突筋および外側翼突筋に炎症性変化を認めた。以上の所見から,左側上顎智歯周囲炎の波及により生じた慢性翼突筋炎により開口障害が生じていると診断した。左側上...

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Published inJournal of the Japanese Society for the Temporomandibular Joint Vol. 27; no. 2; pp. 114 - 119
Main Authors 野上, 以織, 代田, 達夫, 勝田, 秀行, 船登, 雅彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 2015
The Japanese Society for Temporomandibular Joint
Subjects
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ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu.27.114

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Summary:上顎智歯周囲炎に起因した慢性翼突筋炎が原因と考えられた重度開口障害の1例を経験したので,その概要を報告する。患者は69歳の男性で,約5年前より開口障害を自覚するも放置していた。2年前より某総合病院歯科口腔外科で顎関節強直症と診断され,開口訓練が行われていたが,症状の改善が得られず当科へ紹介され受診となった。初診時,最大開口量は5 mm,強制開口量は6 mmと重度の開口障害を認めた。X線写真では下顎頭の形態は正常であったが,CTおよびMRIで内側翼突筋および外側翼突筋に炎症性変化を認めた。以上の所見から,左側上顎智歯周囲炎の波及により生じた慢性翼突筋炎により開口障害が生じていると診断した。左側上顎埋伏智歯を抜歯し,抗菌薬で消炎を図るとともに開口訓練を続けたところ,最大開口域は35 mmまで回復した。現在,術後1年6か月経過しているが,開口域は維持しており経過良好である。今回の症例から,急性炎症を伴わない重度の開口障害に対しては,顎関節周囲組織以外に頭蓋底から頸部をも含めた精査が必要と考えられる。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu.27.114