アルツハイマー病患者の塩酸ドネペジル治療による responder の検出-MRIによる検討
MRIによるアルツハイマー病 (AD) 患者脳の形態学的観察から, 塩酸ドネペジルによる治療効果が予測可能か否かを検重討した. 対象は63例のAD患者 (年齢57~89歳, CDR1~2) で, 治療前後のMMSEスコアの変化から responder (R) 群16例と non-responder (NR) 群47例に分け, 1) コリン作動系ニューロンの障害の指標として無名質の厚さ, 2) 海馬病変の指標として萎縮と組織障害の程度を反映する magnetization transfer ratio (MTR), および3) 大脳白質病変 (PVHとDWMH) の程度について比較検討した. 両...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 40; no. 3; pp. 261 - 266 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.05.2003
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.40.261 |
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Summary: | MRIによるアルツハイマー病 (AD) 患者脳の形態学的観察から, 塩酸ドネペジルによる治療効果が予測可能か否かを検重討した. 対象は63例のAD患者 (年齢57~89歳, CDR1~2) で, 治療前後のMMSEスコアの変化から responder (R) 群16例と non-responder (NR) 群47例に分け, 1) コリン作動系ニューロンの障害の指標として無名質の厚さ, 2) 海馬病変の指標として萎縮と組織障害の程度を反映する magnetization transfer ratio (MTR), および3) 大脳白質病変 (PVHとDWMH) の程度について比較検討した. 両群の間で年齢, 性, 教育期間, 治療期間, 治療開始前のMMSEスコアには相違を認めなかった. R群はNR群と比べて, 無名質の幅の有意な狭小がみられた. 海馬領域の萎縮は両群で差を認めなかったが, MTRはNR群で有意な低値を示した. 大脳白質病変の程度には相違を認めなかった. 両群で相違のみられた無名質の幅と海馬領域のMTRからロジスチック解析を用いて判別を試みた結果, 63例中51例 (81%) で観測数と予測数が一致し, これらの測定から高率に治療効果の予測が可能と考えられた. AD脳の形態学的異常にはある程度の多様性がみられるが, 本研究から, 無名質の萎縮で示されるコリン作動系ニューロンの障害がより高度で, MTRを指標とした海馬領域の組織障害がより軽度の場合に塩酸ドネペジルの効果が期待されると結論された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.40.261 |