世帯の経済水準による終末期ケア格差 : 在宅療養高齢者を対象とした全国調査から

本研究の目的は,世帯の経済水準の違いによる終末期ケアにおける格差を検討することである.質問紙郵送調査に回答した全国の訪問看護ステーション(n=428)を,利用後に死亡した高齢者1,265人を分析対象とした.経済水準は,担当看護師が5段階で評価した.その結果,経済水準が低い層では高い層に比べ,介護力が劣り,やむを得ない理由から在宅療養を開始した割合が高く,自宅で看取る意思表示が少なかった.またプロセスでは,経済水準の低い層で,より多くの福祉サービスを利用しながら,介護力不足を理由に入院・入所する割合が高く,介護者の介護継続意思には揺らぎが多くみられた.さらにアウトカムにおいても,在宅での看取りが...

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Published in社会福祉学 Vol. 52; no. 1; pp. 109 - 122
Main Authors 杉本, 浩章, 近藤, 克則, 樋口, 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本社会福祉学会 31.05.2011
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ISSN0911-0232
2424-2608
DOI10.24469/jssw.52.1_109

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Summary:本研究の目的は,世帯の経済水準の違いによる終末期ケアにおける格差を検討することである.質問紙郵送調査に回答した全国の訪問看護ステーション(n=428)を,利用後に死亡した高齢者1,265人を分析対象とした.経済水準は,担当看護師が5段階で評価した.その結果,経済水準が低い層では高い層に比べ,介護力が劣り,やむを得ない理由から在宅療養を開始した割合が高く,自宅で看取る意思表示が少なかった.またプロセスでは,経済水準の低い層で,より多くの福祉サービスを利用しながら,介護力不足を理由に入院・入所する割合が高く,介護者の介護継続意思には揺らぎが多くみられた.さらにアウトカムにおいても,在宅での看取りが32.5%と高所得層の57.7%より少なく,介護者と担当看護師からみたケアの質も低かった.終末期ケアの構造,プロセス,アウトカムにおいて,経済水準の低い層ほど困難な環境で質が低いという格差が1999年当時存在した可能性が示された.
ISSN:0911-0232
2424-2608
DOI:10.24469/jssw.52.1_109