VI. 直腸癌術後の排便機能障害

直腸癌切除術後には頻回排便や便漏れ, 便意促迫, 便排泄困難などの症状が複合して生じる. 術後排便機能障害には, 直腸の便貯留能低下や内肛門括約筋の機能低下など多数のメカニズムが関与しており, 術前から肛門機能が不良である例, 吻合部が肛門縁に近い例, 術後縫合不全を発生した例では症状が高度となりやすい. 切除術後の再建腸管 (新直腸) の容量を増加させ便貯留能を改善させることを企図してJ型結腸嚢再建やcoloplastyといった再建法の工夫が行われており, これらの再建法によってストレート型再建よりも術後排便機能が良好になると報告されている. 術前に放射線療法や放射線化学療法を施行された例で...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 60; no. 10; pp. 917 - 922
Main Author 大矢, 雅敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2007
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.60.917

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Summary:直腸癌切除術後には頻回排便や便漏れ, 便意促迫, 便排泄困難などの症状が複合して生じる. 術後排便機能障害には, 直腸の便貯留能低下や内肛門括約筋の機能低下など多数のメカニズムが関与しており, 術前から肛門機能が不良である例, 吻合部が肛門縁に近い例, 術後縫合不全を発生した例では症状が高度となりやすい. 切除術後の再建腸管 (新直腸) の容量を増加させ便貯留能を改善させることを企図してJ型結腸嚢再建やcoloplastyといった再建法の工夫が行われており, これらの再建法によってストレート型再建よりも術後排便機能が良好になると報告されている. 術前に放射線療法や放射線化学療法を施行された例では術後排便機能障害が重症化しやすい. また, 肛門に近い部位に生じた直腸癌に対して近年施行されるようになった括約筋間切除術後の患者は便漏れの症状を来たす例が多いが, J型結腸嚢再建が重症化の予防に有用とされている.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.60.917