油脂の構造と機能~トリアシルグリセロール異性体分析の発展

トリアシルグリセロール(TAG)はグリセロールと3つの脂肪酸から構成される食用油脂の主成分であり,生物にとっては非常に重要なエネルギー源である。油脂の物理的,栄養学的な性質はその脂肪酸組成のみならずTAG組成に影響されるが,その脂肪酸の結合位置はランダムではなく油脂の種類に固有のものである。こうした油脂の性質を調べるためにグリセロール骨格上のsn-1,2,3位の結合位置別の脂肪酸組成が調べられている。これは油脂の全体の特徴を捉えられる優れた方法であるが,個々のTAGを見ているわけではない。これまでTAG分子種をクロマトグラフィーにより分離する種々の手法が開発されているが,近年TAG位置異性体に...

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Published inオレオサイエンス Vol. 13; no. 8; pp. 355 - 363
Main Authors 永井, 利治, 後藤, 直宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本油化学会 2013
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ISSN1345-8949
2187-3461
DOI10.5650/oleoscience.13.355

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Summary:トリアシルグリセロール(TAG)はグリセロールと3つの脂肪酸から構成される食用油脂の主成分であり,生物にとっては非常に重要なエネルギー源である。油脂の物理的,栄養学的な性質はその脂肪酸組成のみならずTAG組成に影響されるが,その脂肪酸の結合位置はランダムではなく油脂の種類に固有のものである。こうした油脂の性質を調べるためにグリセロール骨格上のsn-1,2,3位の結合位置別の脂肪酸組成が調べられている。これは油脂の全体の特徴を捉えられる優れた方法であるが,個々のTAGを見ているわけではない。これまでTAG分子種をクロマトグラフィーにより分離する種々の手法が開発されているが,近年TAG位置異性体に加え鏡像異性体も直接分離ができるようになってきた。こうした分析技術の発展によりTAGの構造に由来する栄養・物性の理解はさらに深まるであろう。
ISSN:1345-8949
2187-3461
DOI:10.5650/oleoscience.13.355