たこつぼ心筋症と鑑別が困難であった急性心筋炎の1例

症例は47歳,男性.急性腎盂腎炎の第2病日に急性循環不全を呈し,心電図にてII,III,aVF,V1~6誘導のST上昇を認めたことから,急性冠症候群を疑った.心臓カテーテル検査では冠動脈には有意狭窄を認めず,左室造影での駆出率は13%であった.左室壁運動は,心尖部は無収縮であったが心基部の壁運動が保たれていたことから,たこつぼ心筋症を疑った.血行動態が不安定であったことから,大動脈バルーンパンピング (intraaortic balloon pumping; IABP) による循環補助療法を開始した.その後,胸部誘導のST上昇は間もなく改善したものの,左室壁運動改善の兆しがなく,第8病日までF...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inShinzo Vol. 42; no. 5; pp. 668 - 674
Main Authors 小山, 幸平, 鈴木, 健吾, 大宮, 一人, 三宅, 良彦, 長田, 圭三, 足利, 光平, 明石, 嘉浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 2010
Japan Heart Foundation
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.42.668

Cover

More Information
Summary:症例は47歳,男性.急性腎盂腎炎の第2病日に急性循環不全を呈し,心電図にてII,III,aVF,V1~6誘導のST上昇を認めたことから,急性冠症候群を疑った.心臓カテーテル検査では冠動脈には有意狭窄を認めず,左室造影での駆出率は13%であった.左室壁運動は,心尖部は無収縮であったが心基部の壁運動が保たれていたことから,たこつぼ心筋症を疑った.血行動態が不安定であったことから,大動脈バルーンパンピング (intraaortic balloon pumping; IABP) による循環補助療法を開始した.その後,胸部誘導のST上昇は間もなく改善したものの,左室壁運動改善の兆しがなく,第8病日までForrester IV型にて経過した.第11病日に施行した心筋生検にて,単核球と形質細胞主体の炎症細胞浸潤を認め,間質の浮腫および心筋細胞の変性を認めた.また,心臓造影MRIにて壁運動低下部位の造影遅延を認めたことから急性心筋炎との診断にいたった.発症当初はたこつぼ心筋症を疑ったが,心電図変化が非典型的であり,左室壁運動の回復が遅く,診断に苦慮した本症例に対して,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.42.668