老年症候群の適切な把握のためのもの忘れセンター予診票の作成に関する検討―予診票の妥当性と信頼性および回答者による回答率の差異についての検証

目的:加齢に伴い出現する老年症候群を適切に把握することは,高齢者の診療にとって重要である.今回我々はより具体的かつ正確に評価することを目的として予診票の改訂を行い,妥当性および信頼性を検討した.方法:対象は杏林大学病院もの忘れセンター初診患者.2011年10月~2012年7月の初診患者459人には従前の質問形式による旧予診票を,2012年8月~12月の初診患者277人には新予診票を診察前に渡し,患者本人もしくは家族その他の同伴者が記入の上,老年症候群の有無を調査した.新予診票の質問項目は各種ガイドラインの診断基準を参考にし,具体的かつ専門用語の使用を控えた「はい/いいえ」で答える17項目とした...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 51; no. 2; pp. 161 - 169
Main Authors 須藤, 紀子, 永井, 久美子, 小柴, ひとみ, 松井, 敏史, 長谷川, 浩, 小林, 義雄, 神崎, 恒一, 山田, 如子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2014
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.51.161

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Summary:目的:加齢に伴い出現する老年症候群を適切に把握することは,高齢者の診療にとって重要である.今回我々はより具体的かつ正確に評価することを目的として予診票の改訂を行い,妥当性および信頼性を検討した.方法:対象は杏林大学病院もの忘れセンター初診患者.2011年10月~2012年7月の初診患者459人には従前の質問形式による旧予診票を,2012年8月~12月の初診患者277人には新予診票を診察前に渡し,患者本人もしくは家族その他の同伴者が記入の上,老年症候群の有無を調査した.新予診票の質問項目は各種ガイドラインの診断基準を参考にし,具体的かつ専門用語の使用を控えた「はい/いいえ」で答える17項目とした.対象者にはその後高齢者総合機能評価(CGA)を試行し,新予診票の構成概念妥当性および因子妥当性を検討した.また,旧/新予診票間での各質問項目の陽性回答率の比較のほか,新予診票を活用する際に,回答者が本人の場合と同伴者の場合とで陽性回答率に違いが見られるかどうかについても併せて検討した.結果:対象者における予診票の回収率は100%であり,旧/新の予診票回答者の年齢・男女比・MMSE得点など基本属性に差は無かった.新予診票とCGA各項目との相関を検討したところ,新予診票の17項目全てがCGA各項目のいずれかと少なくとも1つの有意な相関を有した.また因子分析の結果17項目は8つの因子に分類され,いずれもCGA各項目と有意な相関が認められた.信頼性に関しては,Cronbachのα係数が0.729,Guttmannの折半法では係数0.619であった.旧/新予診票ともに,患者が高齢でMMSE低値なほど同伴者が回答していた.新予診票において本人の訴えが最も多い項目は「不眠」であり,これは同伴者が記入した場合でも同様の陽性率であった.一方,「つまずき」「転倒」「歩行障害」「妄想」では本人よりも同伴者が「あり」と多く回答した.「食欲低下」「尿失禁」は旧予診票では同伴者回答での陽性率が高かったが,新予診票では回答者による差が無くなった.旧/新予診票間の比較では,新予診票での陽性回答率は不眠については上昇し,頻尿では低下した.転倒に関しては,本人の陽性回答率は旧/新予診票で変化がなかったが,同伴者の回答では新予診票で陽性回答率が上昇した.結論:新予診票は物忘れ外来の老年症候群検出のスクリーニングとして十分使用に耐えうる妥当性・信頼性を有すると考えられた.また老年症候群の把握に対しては,単に各症候の有無を質問するよりも,具体的な数字や服薬の有無,その結果困難が生じているかなどを考慮して質問する必要があると同時に,高齢者の身体状況の把握には同伴者の視点が重要であることが示された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.51.161