特発性正常圧水頭症とアルツハイマー型認知症の定量的画像指標の比較
目的:本邦の特発性正常圧水頭症(以下iNPH)診療ガイドラインでは,possible iNPHの診断基準を満たす症例に対して髄液排除試験を行うよう推奨されている.しかし頭部MRI所見が類似したアルツハイマー型認知症(以下AD)例がpossible iNPHの診断基準を満たすことも多いため,髄液排除試験の奏功率はあまり高くない.そのためADとiNPHの鑑別,およびpossible iNPHにおける髄液排除試験の有効性を予測できる簡便な定量的画像指標の探索を行った.方法:臨床的にpossible iNPHと診断され髄液排除試験を施行した18例(髄液排除試験有効12例,無効6例)と,外来通院中のpr...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 49; no. 6; pp. 731 - 739 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.49.731 |
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Summary: | 目的:本邦の特発性正常圧水頭症(以下iNPH)診療ガイドラインでは,possible iNPHの診断基準を満たす症例に対して髄液排除試験を行うよう推奨されている.しかし頭部MRI所見が類似したアルツハイマー型認知症(以下AD)例がpossible iNPHの診断基準を満たすことも多いため,髄液排除試験の奏功率はあまり高くない.そのためADとiNPHの鑑別,およびpossible iNPHにおける髄液排除試験の有効性を予測できる簡便な定量的画像指標の探索を行った.方法:臨床的にpossible iNPHと診断され髄液排除試験を施行した18例(髄液排除試験有効12例,無効6例)と,外来通院中のprobable AD症例19例を対象とし,頭部MRI画像のVSRADのZスコア,Evans Index,側脳室前角脳幅比,鈎回間距離,内側側頭葉最小厚,海馬高,脈絡膜裂高,側脳室下角横径と縦径,シルビウス裂最大高の左右平均値を測定し,probable AD症例とpossible iNPH症例,およびpossible iNPH症例の髄液排除試験有効例と無効例で,それぞれ比較した.結果:probable AD症例に比べてpossible iNPH症例で,VSRADのZスコア,Evans Index,側脳室前角脳幅比,側脳室下角横径と縦径,シルビウス裂最大高が有意に高値であり,VSRADのZスコア,Evans Indexを除くカットオフ値はそれぞれ,0.31,6.0 mm,3.13 mm,7.6 mmであった.またpossible iNPH症例に対する髄液排除試験無効例に比べて有効例では,内側側頭葉最小厚が高値であり,そのカットオフ値は11.0 mmであった.結論:頭部MRIを用いた簡易な定量評価を行うことによりpossible iNPHとprobable ADの鑑別,possible iNPH症例に対する髄液排除試験の有効性の予測ができる可能性が示された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.49.731 |