介護老人保健施設におけるインフルエンザ菌感染症の集団発生
緒言:われわれの施設でインフルエンザ菌(以下HIと略す)感染症の多発があり,一部は重症肺炎にまで進行した.高齢者のHI感染症の臨床的特徴と介護老人保健施設における流行予防について検討したので報告する.方法:対象は介護老人保険施設において平成17年7月20日∼8月31日の期間の2階入所者46人であり,HI非感染群(21例)とHI感染症群(25例),その内の重症HI肺炎群(6例)の3群に分け,基礎疾患,機能障害,体重,体重変化,年齢,性,身体障害および認知障害に関する生活自立度評価尺度,臨床症状,臨床検査を比較した.また喀痰8,血液1検体で細菌培養と薬剤感受性検査およびHI血清型を検査した.また流...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 45; no. 4; pp. 421 - 427 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
2008
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.45.421 |
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Summary: | 緒言:われわれの施設でインフルエンザ菌(以下HIと略す)感染症の多発があり,一部は重症肺炎にまで進行した.高齢者のHI感染症の臨床的特徴と介護老人保健施設における流行予防について検討したので報告する.方法:対象は介護老人保険施設において平成17年7月20日∼8月31日の期間の2階入所者46人であり,HI非感染群(21例)とHI感染症群(25例),その内の重症HI肺炎群(6例)の3群に分け,基礎疾患,機能障害,体重,体重変化,年齢,性,身体障害および認知障害に関する生活自立度評価尺度,臨床症状,臨床検査を比較した.また喀痰8,血液1検体で細菌培養と薬剤感受性検査およびHI血清型を検査した.また流行直前の風邪症候群散発を検討した.結果:低い身体障害自立度と低体重がHI感染症およびHI重症肺炎に有意に罹患し,脳梗塞はHI感染症に罹患する傾向が高かった.更に認知自立度は重症HI肺炎罹患と有意に関連した.HI感染症の発端者はフロアの一番端に位置する多床室から発生したが,その部屋から離れるに従い発症時期が遅れた.最初のHI検出までに15例(60%)が感染し,内5例(33%)が重症肺炎に進行した.その後10例(40%)が感染したが,この時期には38°C以上の発熱で直ちに抗生剤を投与したが,重症肺炎への進行は1例(10%)のみであった.有意差は得られなかったものの早期抗生剤投与で重症肺炎が減った.培養HIは全てBLNARであり,さらにCCL, CFDNの感受性(-),また血清型はnontypeableであった.なおHI感染症に先立って死亡した1例を加えて,7例が風邪症候群に罹患した.考察:高齢者はHI感染症罹患および重症化の危険性が高い.老人介護施設では医療上の制約が大きいが,感染症の流行を可能な限り早く認識し,速やかに治療を開始することが重要である. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.45.421 |