寒冷ストレス誘発鎮痛の発現における中枢モノアミン作動性神経系の役割

寒冷ストレス誘発鎮痛発現における中枢モノアミン作動性神経系の役割を考究する目的で, ストレス鎮痛発現時の脳あるいは脊髄におけるモノアミンとその代謝物の量的変化をクーロメトリックHPLC法を用いて検討した.寒冷ストレス誘発鎮痛の発現は, 4℃の寒冷ストレス環境下に0.25, 0.5, 1あるいは2時間曝露し, その解除直後にtail flick latency法で疼痛閾値を測定して評価した.寒冷ストレス誘発鎮痛は寒冷ストレス0.25時間負荷から発現し, 1および2時間曝露後には, 有意に増大した.また, 寒冷ストレス鎮痛発現時の脳 (視床下部, 中脳―視床, 延髄―橋) および脊髄 (頸髄, 胸...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 63; no. 3; pp. 314 - 322
Main Authors 長谷川, 仁美, 小口, 勝司, 武田, 弘志, 藤田, 晃生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.06.2003
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.63.314

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Summary:寒冷ストレス誘発鎮痛発現における中枢モノアミン作動性神経系の役割を考究する目的で, ストレス鎮痛発現時の脳あるいは脊髄におけるモノアミンとその代謝物の量的変化をクーロメトリックHPLC法を用いて検討した.寒冷ストレス誘発鎮痛の発現は, 4℃の寒冷ストレス環境下に0.25, 0.5, 1あるいは2時間曝露し, その解除直後にtail flick latency法で疼痛閾値を測定して評価した.寒冷ストレス誘発鎮痛は寒冷ストレス0.25時間負荷から発現し, 1および2時間曝露後には, 有意に増大した.また, 寒冷ストレス鎮痛発現時の脳 (視床下部, 中脳―視床, 延髄―橋) および脊髄 (頸髄, 胸髄, 腰髄) におけるモノアミン動態を検討した結果, 寒冷ストレスの0.25あるいは0.5時間負荷後, 延髄―橋においてノルエピネフリン (NE) の代謝回転亢進を伴なうNE作動性神経系の活性化が観察された.また, 脊髄では, セロトニン (5-HT) の合成促進と代謝回転の亢進を伴う5-HT作動性神経系の活性化が認められた.さらに, これら神経化学的変化は, 寒冷ストレスの1あるいは2時間負荷では観察されなかった.以上のことから, 寒冷ストレスの短時間負荷による鎮痛の発現には, NE作動性神経と5-HT作動性神経が関与する下行性痛覚抑制系の活性化が作用することが示唆された.また, 長時間負荷が誘発する鎮痛の発現には, 中枢モノアミン作動性神経が関与しないことが明らかとなった.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.63.314