特発性総管胆拡張症の2症例

特発性総管胆拡張症は1723年Vaterにより初めて報告されて以来稀な疾患とされてきたのであるが, わが国では欧米諸国に比較してより高い頻度で遭遇されている. われわれは昭和33年1月1日以後昭和42年12月31日までの10年間に当院外科外来を訪れた121,770例の患者の中で2例を経験したので報告する. 同期間中に行なわれた胆道系手術例数は242例である. 「症例」第1例 3ヵ月 男児 主訴: 緑色便. 約1ヵ月前から1日に1~2行の緑色便を認め, 某小児科医で受診し貧血と腹部腫瘤を指摘され, 当院に紹介さる. 既往歴, 家族歴に特記すべきこと無し. 体格中等, 栄養不良, 顔面やや蒼白,...

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Published in医療 Vol. 24; no. 3; pp. 257 - 262
Main Authors 島, 健, 桐本, 孝次, 小野田, 一男, 森, 隆, 加藤, 正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1970
医療同好会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.24.257

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Summary:特発性総管胆拡張症は1723年Vaterにより初めて報告されて以来稀な疾患とされてきたのであるが, わが国では欧米諸国に比較してより高い頻度で遭遇されている. われわれは昭和33年1月1日以後昭和42年12月31日までの10年間に当院外科外来を訪れた121,770例の患者の中で2例を経験したので報告する. 同期間中に行なわれた胆道系手術例数は242例である. 「症例」第1例 3ヵ月 男児 主訴: 緑色便. 約1ヵ月前から1日に1~2行の緑色便を認め, 某小児科医で受診し貧血と腹部腫瘤を指摘され, 当院に紹介さる. 既往歴, 家族歴に特記すべきこと無し. 体格中等, 栄養不良, 顔面やや蒼白, 眼瞼結膜貧血状, 眼球結膜軽度黄染. 頸部胸部異常認めず. 体表リンパ節触知せず. 右腹部に小児頭大の充実性腫瘤を触知. 表面平滑弾性硬, 境界鮮明移動性なし.(図1a)入院時の臨床諸検査所見は表1に示すとおりで貧血と軽度の閉塞性黄疸を認めるに過ぎない. 胃腸造影像では巨大な腫瘤が胃腸を左側前方へと圧排しておりさらに腎盂造影像でも腎盂自身の変形はほとんど見られないが腫瘤が右腎盂を後方へと圧排している像を得た.(図2a)
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.24.257