VI.深部痔瘻の治療

坐骨直腸窩・骨盤直腸窩痔瘻の以前の治療法では,筋間痔瘻と同様に痔瘻の全開放術が行われている.しかし過去に出版された教科書には,深部痔瘻に開放術が施行されると,直腸が前方に移動する可能性や,症例により術後の便失禁がかなりの頻度で発生することが報告されている.事実低位筋間痔瘻で開放術後の肛門内圧(静止圧)を調べてみると,側方の開放術は後方の開放術よりも有意に静止圧が低下している.また前方,側方,後方の低位筋間痔瘻に対して開放術が行われ,「肛門のtonusが低下」を1年後に問う内容のアンケートによると,低下したとする症例は前方24.3%,側方54.9%,後方16.4%であった. すなわち括約筋を切断...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 66; no. 10; pp. 1044 - 1058
Main Authors 辻, 順行, 緒方, 俊二, 高野, 正博, 福永, 光子, 家田, 浩男, 村田, 隆二, 田中, 正文, 宮田, 美智也, 中村, 寧, 佐伯, 泰愼, 山田, 一隆
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2013
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.66.1044

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Summary:坐骨直腸窩・骨盤直腸窩痔瘻の以前の治療法では,筋間痔瘻と同様に痔瘻の全開放術が行われている.しかし過去に出版された教科書には,深部痔瘻に開放術が施行されると,直腸が前方に移動する可能性や,症例により術後の便失禁がかなりの頻度で発生することが報告されている.事実低位筋間痔瘻で開放術後の肛門内圧(静止圧)を調べてみると,側方の開放術は後方の開放術よりも有意に静止圧が低下している.また前方,側方,後方の低位筋間痔瘻に対して開放術が行われ,「肛門のtonusが低下」を1年後に問う内容のアンケートによると,低下したとする症例は前方24.3%,側方54.9%,後方16.4%であった. すなわち括約筋を切断することの括約筋機能に対する影響の大きさが示されている.この結果からすれば,Hanley法においても,後方の主病変部から原発口の位置する歯状線までは全開放されるために,症例によっては術後の括約不全が危惧される. したがって深部痔瘻では,現在の手術法の中で最も括約筋を温存する括約筋温存術の適応が最も推奨された.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.66.1044