交通騒音が睡眠に及ぼす影響についての科学的知見

交通騒音はパワーレベルが大きな音の一つであり,なおかつ,我々の生活に身近に存在するため,幹線道路や鉄道の沿線,航空機の飛行経路の付近などでは,寝室内に伝搬した交通騒音が睡眠妨害を引き起こすことがある。交通騒音が睡眠に及ぼす影響については古くから研究がなされているが,2002年の環境騒音指令の発令,あるいは2009年の WHO 欧州事務局による夜間騒音ガイドラインの発行などを契機に,夜間騒音による睡眠妨害,ひいては健康への悪影響についての議論が欧州地域を中心として加速している。本稿は,交通騒音と睡眠妨害に関する国内外の科学的知見に基づいたエビデンスを紹介するとともに,今後の研究課題についての考察...

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Published in睡眠と環境 Vol. 18; no. 2; pp. 27 - 33
Main Author 森長, 誠
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本睡眠環境学会 2024
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ISSN1340-8275
2758-8890
DOI10.60259/jsleepenvi.18.2_27

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Summary:交通騒音はパワーレベルが大きな音の一つであり,なおかつ,我々の生活に身近に存在するため,幹線道路や鉄道の沿線,航空機の飛行経路の付近などでは,寝室内に伝搬した交通騒音が睡眠妨害を引き起こすことがある。交通騒音が睡眠に及ぼす影響については古くから研究がなされているが,2002年の環境騒音指令の発令,あるいは2009年の WHO 欧州事務局による夜間騒音ガイドラインの発行などを契機に,夜間騒音による睡眠妨害,ひいては健康への悪影響についての議論が欧州地域を中心として加速している。本稿は,交通騒音と睡眠妨害に関する国内外の科学的知見に基づいたエビデンスを紹介するとともに,今後の研究課題についての考察を行うものである。最初に,交通騒音による睡眠妨害の評価がどのような方法で実施されているか概観する。次に,もっとも単純な騒音の発生条件として,1回の騒音が発生した時の強度と覚醒の関係についての研究事例を紹介する。さらに,現状での環境騒音政策の基礎となっている,夜間全体での平均的な騒音レベルと主観申告による睡眠妨害についての研究事例を紹介するとともに,交通騒音による睡眠妨害の評価方法に関する今後の課題について考察した。
ISSN:1340-8275
2758-8890
DOI:10.60259/jsleepenvi.18.2_27