中耳の鉄粉異物3症例の検討
中耳異物は発症頻度が少なく, 外耳道異物と比較して稀な疾患である。 今回われわれは, 溶接作業中の鉄粉が中耳腔内に異物として停滞し難聴を来した3症例を経験したので報告する。 自験例3例とも溶接作業中の火花飛入が受傷転機となっていた。 全例に鼓膜穿孔と耳漏を認めたが, 過去の文献で報告されている顔面神経麻痺や味覚障害, めまいなどの合併症は認めなかった。 治療は, 全症例に鼓室形成術 (Ⅰ型) を施行したものの, 全例において術後穿孔をきたした。 中耳異物において問題となりうるのは主に中耳の遷延する炎症, 閉鎖しない穿孔, 難聴である。 異物の大きさによっては視診では確認できず, 画像検査でも...
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Published in | JIBI INKOKA TEMBO Vol. 58; no. 1; pp. 31 - 36 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
耳鼻咽喉科展望会
2015
Society of Oto-rhino-laryngology Tokyo |
Subjects | |
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ISSN | 0386-9687 1883-6429 |
DOI | 10.11453/orltokyo.58.1_31 |
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Summary: | 中耳異物は発症頻度が少なく, 外耳道異物と比較して稀な疾患である。 今回われわれは, 溶接作業中の鉄粉が中耳腔内に異物として停滞し難聴を来した3症例を経験したので報告する。 自験例3例とも溶接作業中の火花飛入が受傷転機となっていた。 全例に鼓膜穿孔と耳漏を認めたが, 過去の文献で報告されている顔面神経麻痺や味覚障害, めまいなどの合併症は認めなかった。 治療は, 全症例に鼓室形成術 (Ⅰ型) を施行したものの, 全例において術後穿孔をきたした。 中耳異物において問題となりうるのは主に中耳の遷延する炎症, 閉鎖しない穿孔, 難聴である。 異物の大きさによっては視診では確認できず, 画像検査でも確認が困難な例もある。 中耳鉄粉異物は, 受傷から時間が経過することにより異物反応が起き, 肉芽や線維結合組織が増生し, 異物をその部位に固定してしまう可能性がある。 また, 中耳病変を呈する外傷性鼓膜穿孔の場合, 受傷転機によっては中耳内の異物の存在も考慮し, 早急に画像検査を行うことが重要であると考える。 |
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ISSN: | 0386-9687 1883-6429 |
DOI: | 10.11453/orltokyo.58.1_31 |