ブレグジットに関する政治的不確実性と日本の自動車産業

この論文ではイギリスのEU離脱(ブレグジット)による政治的不確実性が日本の自動車産業の財務指標に影響を与えたか否かについて差の差推定法(DID法)を用いて企業レベルで分析した。日本の自動車産業に属する企業のうちイギリスに子会社を持つ企業を処置群とし,2016年のEU離脱に関する国民投票,2019年のイギリス議会での政治的混乱などブレグジットのプロセス全体に渡って複数の時点をトリートメントの時点とした。分析の結果,ブレグジットによる不確実性はその全過程を通して1株当たり利益(EPS)に負の有意な影響を与えたことが分かった。また,2019年後半にEU離脱合意案の是非を巡ってイギリス議会が混乱に陥っ...

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Published in経済論叢 Vol. 197; no. 1; pp. 79 - 100
Main Author 小林, 広樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 京都大学経済学会 28.02.2023
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ISSN0013-0273
2758-3988
DOI10.57475/keizaironso.197.1.6

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Summary:この論文ではイギリスのEU離脱(ブレグジット)による政治的不確実性が日本の自動車産業の財務指標に影響を与えたか否かについて差の差推定法(DID法)を用いて企業レベルで分析した。日本の自動車産業に属する企業のうちイギリスに子会社を持つ企業を処置群とし,2016年のEU離脱に関する国民投票,2019年のイギリス議会での政治的混乱などブレグジットのプロセス全体に渡って複数の時点をトリートメントの時点とした。分析の結果,ブレグジットによる不確実性はその全過程を通して1株当たり利益(EPS)に負の有意な影響を与えたことが分かった。また,2019年後半にEU離脱合意案の是非を巡ってイギリス議会が混乱に陥った時期にはEPSの他に売上高,売上総利益,当期純利益,営業費用に負の有意な影響が認められた。この結果からブレグジットの様々な時点でそれぞれ政治的不確実性が生じ,その影響が経済的・地理的に離れた日本の自動車産業に伝播したことがわかった。
ISSN:0013-0273
2758-3988
DOI:10.57475/keizaironso.197.1.6