重症虚血肢に対する膝窩-下腿・足部動脈バイパス術の妥当性に関する検討

【背景】重症虚血肢に対する下腿・足部動脈バイパス術の流入動脈を膝窩動脈とする妥当性につき,われわれの経験を中心に検討した.【対象と方法】2003年より2008年に経験した膝窩-下腿・足部動脈バイパス術10例を対象とした.症例の内訳は男性 7 例,女性 3 例,平均年齢は72.7歳で,全例Fontaine IV度,8 例(80%)が糖尿病を合併,1 例(10%)が慢性血液透析例であった.全例に大伏在静脈を用いたバイパス術が施行され,流入動脈は膝上膝窩動脈が 7 例,膝下膝窩動脈が 3 例,末梢側吻合部は後脛骨動脈が 6 例,足背動脈が 4 例であった.また10例中 2 例に同時期に浅大腿動脈に対...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inJapanese Journal of Vascular Surgery Vol. 18; no. 7; pp. 659 - 665
Main Authors 杉本, 幸司, 辻, 依子, 辻, 義彦, 北野, 育郎, 寺師, 浩人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 2009
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0918-6778
1881-767X
DOI10.11401/jsvs.18.659

Cover

More Information
Summary:【背景】重症虚血肢に対する下腿・足部動脈バイパス術の流入動脈を膝窩動脈とする妥当性につき,われわれの経験を中心に検討した.【対象と方法】2003年より2008年に経験した膝窩-下腿・足部動脈バイパス術10例を対象とした.症例の内訳は男性 7 例,女性 3 例,平均年齢は72.7歳で,全例Fontaine IV度,8 例(80%)が糖尿病を合併,1 例(10%)が慢性血液透析例であった.全例に大伏在静脈を用いたバイパス術が施行され,流入動脈は膝上膝窩動脈が 7 例,膝下膝窩動脈が 3 例,末梢側吻合部は後脛骨動脈が 6 例,足背動脈が 4 例であった.また10例中 2 例に同時期に浅大腿動脈に対してバルーン血管拡張術が追加施行されたが,いずれも浅大腿動脈中央部に存在する各々が 2cm長の多発性狭窄病変であった.【結果】全例にバイパスグラフトの初期開存が得られ,術前20.5 ± 9.3mmHgであった皮膚灌流圧(SPP)は,術後67.5 ± 23.9mmHgにまで上昇した.6 例で小切断が施行されたが,全例で大切断が回避できた.平均15.9カ月のフォローアップで全例に二次開存が得られ,術後 9 カ月目に脳出血にて死亡した 1 例を除いて健在である.なお,フォローアップ中に浅大腿動脈における新病変出現や血管内治療部位の再狭窄は認めなかった.【結論】浅大腿動脈病変を適切に評価,治療すれば,膝窩-下腿・足部動脈バイパス術は重症虚血肢に対する血行再建術の有効な選択肢の一つになりうる可能性が示唆された.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.18.659