分子系統解析によりFonsecaea monophoraと同定されたchromomycosisの2例

黒色真菌による感染症を黒色真菌感染症と呼ぶが,その原因菌は単一ではなく,臨床像や菌の寄生形態もさまざまである.本症は,黒色分芽菌症 (chromoblastomycosis),黒色顆粒菌腫 (black-grain mycetoma),黒色菌糸症 (phaeohyphomycosis) に大別される.原因となる黒色真菌は多種類あるが,これまでわが国で最も多い原因菌はFonsecaea pedrosoiであり,黒色分芽菌症では分離菌の90%を占めるとされてきた.一方Fonsecaea monophoraは,rRNA遺伝子のITS領域の分子系統解析の結果から,Fonsecaea 属をF. pedr...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inMedical Mycology Journal Vol. 57; no. 4; pp. J133 - J139
Main Authors 塩原, 哲夫, 牛込, 悠紀子, 福田, 知雄, 狩野, 葉子, 三友, 貴代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医真菌学会 2016
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN2185-6486
2186-165X
DOI10.3314/mmj.15-00026

Cover

More Information
Summary:黒色真菌による感染症を黒色真菌感染症と呼ぶが,その原因菌は単一ではなく,臨床像や菌の寄生形態もさまざまである.本症は,黒色分芽菌症 (chromoblastomycosis),黒色顆粒菌腫 (black-grain mycetoma),黒色菌糸症 (phaeohyphomycosis) に大別される.原因となる黒色真菌は多種類あるが,これまでわが国で最も多い原因菌はFonsecaea pedrosoiであり,黒色分芽菌症では分離菌の90%を占めるとされてきた.一方Fonsecaea monophoraは,rRNA遺伝子のITS領域の分子系統解析の結果から,Fonsecaea 属をF. pedrosoi,F. monophora とそれ以外の種に分類したことにより派生してきた菌種である.今回,われわれは顔面および上腕に生じたchromomycosisの2例を経験した.2例とも真菌培養およびスライドカルチャーではF. pedrosoiとF. monophoraの鑑別ができなかったが,分子系統解析の結果,いずれもF. monophora が原因菌であることが確認された.分子系統解析の導入により,これまでF. pedrosoi と報告されていたもののなかにもF. monophora が多く含まれることはすでに明らかになっており,Fonsecaea 属を原因菌とする過去の報告例をどのように扱うべきか,改めて考えてみる時期にきているように思われる.
ISSN:2185-6486
2186-165X
DOI:10.3314/mmj.15-00026