乳児院から児童養護施設への緩やかな移行の実現に向けた乳児院の養育者による乳幼児への実践的支援:措置変更に着目したアタッチメントの視点からの検討
本研究は,措置変更時期における,乳児院から児童養護施設への緩やかな移行を実現するために,乳児院の担当養育者が子どもをいかに支援するべきかについて明らかにすることを目的とした。担当養育者を対象に,支援の実態を半構造化インタビューで尋ねたところ,担当養育者への安定したアタッチメント形成,個別性に配慮した慣らし保育の実践,子どもが移行先の養育者と信頼関係を結ぶためのサポート,アフターケアなどが行われていることが明らかとなった。そのうえで,担当養育者への安定したアタッチメントを通して,子どもに形成された自己と他者への信頼の基盤が,措置変更時の担当養育者との分離の受容や,移行後,児童養護施設の養育者との...
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Published in | 発達心理学研究 Vol. 36; no. 2; pp. 95 - 110 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本発達心理学会
20.06.2025
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Subjects | |
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ISSN | 0915-9029 2187-9346 |
DOI | 10.11201/jjdp.36.0078 |
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Summary: | 本研究は,措置変更時期における,乳児院から児童養護施設への緩やかな移行を実現するために,乳児院の担当養育者が子どもをいかに支援するべきかについて明らかにすることを目的とした。担当養育者を対象に,支援の実態を半構造化インタビューで尋ねたところ,担当養育者への安定したアタッチメント形成,個別性に配慮した慣らし保育の実践,子どもが移行先の養育者と信頼関係を結ぶためのサポート,アフターケアなどが行われていることが明らかとなった。そのうえで,担当養育者への安定したアタッチメントを通して,子どもに形成された自己と他者への信頼の基盤が,措置変更時の担当養育者との分離の受容や,移行後,児童養護施設の養育者との良好な関係性の構築を後押しする可能性が示された。また,移行後も担当養育者が子どもとのつながりを保つことにより,子どもの養育環境には一定の連続性が保たれ,担当養育者が子どもの発達や成長を支えていることも明らかになった。本研究は,乳児院での担当養育者へのアタッチメントを通して形成された自他信頼の基盤が,児童養護施設への移行後においても,維持・強化されるための支援が重要であることを示唆した。【インパクト】本研究では,乳児院から児童養護施設への措置変更を迎える子どもに対し,乳児院の担当養育者が実践している効果的な支援内容を明らかにした。乳児院の担当養育者に対するアタッチメントを通して,子どもの自己と他者への信頼の基盤が形成される。この基盤が形成され,それが維持・強化されるための支援は,子どもの社会情緒的な発達や成長に不可欠であり,緩やかな移行の実現に寄与し得るものであることを示唆した。 |
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ISSN: | 0915-9029 2187-9346 |
DOI: | 10.11201/jjdp.36.0078 |