非肥満小児と肥満小児における尿中アルブミンと高分子量アディポネクチンについて

小児期の肥満は, 肥満症やメタボリックシンドロームの一因となり早期の介入が必要であるが, 明らかな臨床症状には乏しく, 一般検査で異常値を認めることは稀である.一方, アディポサイエンスの進歩によりレプチンやアディポネクチンは肥満を早期評価する上で注目され, 肥満症の合併症を予見する指標としては高インスリン血症が知られている.また, メタボリックシンドロームは, 特に中心性肥満に腎障害を合併することが知られ, 高率に尿中アルブミンの高値を認めるとの報告がある.今回, われわれは非肥満小児と肥満小児における尿中アルブミンと高分子量アディポネクチンについて検討し, さらに腎障害の原因となりうる代謝...

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Published in昭和医学会雑誌 Vol. 68; no. 2; pp. 113 - 118
Main Authors 田中, 美智代, 田中, 大介, 遠藤, 明, 井上, 真理, 櫻井, 裕子, 日比野, 聡, 阿部, 祥英, 岡部, 均, 板橋家, 頭夫, 中野, 有也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.04.2008
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ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.68.113

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Summary:小児期の肥満は, 肥満症やメタボリックシンドロームの一因となり早期の介入が必要であるが, 明らかな臨床症状には乏しく, 一般検査で異常値を認めることは稀である.一方, アディポサイエンスの進歩によりレプチンやアディポネクチンは肥満を早期評価する上で注目され, 肥満症の合併症を予見する指標としては高インスリン血症が知られている.また, メタボリックシンドロームは, 特に中心性肥満に腎障害を合併することが知られ, 高率に尿中アルブミンの高値を認めるとの報告がある.今回, われわれは非肥満小児と肥満小児における尿中アルブミンと高分子量アディポネクチンについて検討し, さらに腎障害の原因となりうる代謝異常の有無を総コレステロール, トリグリセライド, 尿酸血糖インスリンをもとに非肥満小児と肥満小児において比較検討を行った.対象となった児は, 非肥満小児群男児22名, 女児8名, 肥満小児群男児27名, 女児12名であった.非肥満小児群と肥満小児群において, 高分子量アディポネクチン/総アディポネクチン比 (以下HA/TA) と尿中アルブミン (mg/g・Cre) について検討した結果, HA/TAは男女共に非肥満小児群より肥満小児群で有意に低値であったが, 尿中アルブミンは非肥満小児群と肥満小児群で男女共に有意差を認めなかった.また, 非肥満小児群と肥満小児群のいずれも男女共にHA/TAと尿中アルブミンの間に相関はなかった.また, 血液一般検査, 尿検査所見の検討では, 尿酸に関してのみ, 男女共に非肥満小児群より肥満小児群で有意に上昇していた.今回の検討では, これまでの報告と同様に, 非肥満小児と肥満小児においてHA/TAは有意差を認めた.しかし, 成人の肥満では尿中アルブミンの増加が注目されているが, 本検討では肥満小児の尿中アルブミンの増加は認めなかった.その理由は, 成人の肥満では尿中アルブミンが増加する機序として, 様々な因子が関与していることが知られているが, 小児期では, まだそれらが必ずしも出現していないためと思われた.しかし, 長期にわたって肥満の影響が及ぼされる小児期の肥満は, 検査データが正常であっても無視することができない.今後, 小児肥満症や小児のメタボリックシンドローム, およびその合併症の出現順序を肥満度の程度や肥満状態に暴露された期間などを含めて経過を追い, 尿中アルブミンとアディポサイトカインの関係を解明し, さらに早期予防と治療に結び付けていくための検討を行っていきたい.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.68.113