幼児を育てる母親の抑うつ症状と子育てに関する援助要請抵抗感の関連

本研究の目的は母親の抑うつ症状と援助要請抵抗感の関連を検討することである。検討にあたって援助要請抵抗感尺度を作成し,信頼性を内的整合性,妥当性を内容的妥当性と構成概念妥当性(ソーシャルサポート,抑うつとの関連の仮説検証)の点から検討した。幼児を育てる母親315名のデータより,夫,実母,友人,保育者それぞれに対する1因子構造の援助要請抵抗感尺度が作成された。4つの尺度の内的整合性はα=.82~.83であり,十分高かった。夫,実母,友人に対する尺度は知覚されたサポートとの間に負の単相関係数が得られ(r=−.35~−.56),4つの尺度とCES-Dの間に正の単相関係数が得られた(r=.26~.34)...

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Published in発達心理学研究 Vol. 35; no. 2; pp. 93 - 100
Main Authors 本田, 泰代, 本田, 真大
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本発達心理学会 20.06.2024
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ISSN0915-9029
2187-9346
DOI10.11201/jjdp.35.0067

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Summary:本研究の目的は母親の抑うつ症状と援助要請抵抗感の関連を検討することである。検討にあたって援助要請抵抗感尺度を作成し,信頼性を内的整合性,妥当性を内容的妥当性と構成概念妥当性(ソーシャルサポート,抑うつとの関連の仮説検証)の点から検討した。幼児を育てる母親315名のデータより,夫,実母,友人,保育者それぞれに対する1因子構造の援助要請抵抗感尺度が作成された。4つの尺度の内的整合性はα=.82~.83であり,十分高かった。夫,実母,友人に対する尺度は知覚されたサポートとの間に負の単相関係数が得られ(r=−.35~−.56),4つの尺度とCES-Dの間に正の単相関係数が得られた(r=.26~.34)。よって,本尺度の構成概念妥当性が支持された。さらに抑うつ群と非抑うつ群の母親を比較した結果,抑うつ群の母親の方が悩みの経験が多いことに加えて知覚されたサポートが低く,援助要請抵抗感が高いことが明らかになった。抑うつ症状と援助要請の負の関連は幼児を育てる母親においても追証された。【インパクト】子育てに悩みは尽きない。悩み苦しみながらも誰にも相談できない保護者の心理を明らかにすることは,よりよい子育て支援サービスの構築にも貢献するであろう。本研究から幼児期の子育てをする母親の悩みの相談(援助要請)の抵抗感が明らかにされ,抑うつ症状の強い母親は相談もしづらいことが示された。メンタルヘルスの不調による子育ての困難さに相談できない困難さも重なっていると言えよう。
ISSN:0915-9029
2187-9346
DOI:10.11201/jjdp.35.0067