医療職配置義務のない高齢者施設・住宅における感染症集団発生及び入居者の重症化を防ぐ方策の検討

(緒言) 本研究は,高齢者施設・住宅における感染症の集団発生の実態や,当該施設・住宅および管轄する保健所が行っている感染症対策の現状を調査・分析することにより,医療職配置義務のない高齢者施設・住宅における感染症集団発生及び入居者の重症化を防ぐ方策を検討することを目的とした.(研究方法) A県に所在する全保健所の過去の感染対策活動記録を,同県感染症担当課の同意を得たうえで閲覧し,集団発生が起きた施設特性(入居者数・職員数等),施設内感染状況(発症者数,日別発症者発生状況,入院者数),保健所対応状況(事案探知日,感染拡大防止のための指導内容)等の情報を収集した.得られたデータから統計的解析を行い,...

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Published inThe Bulletin of Chiba Prefectural University of Health Sciences Vol. 12; no. 1; p. 1_118
Main Authors 杉本, 健太郎, 泰羅, 万純, 佐藤, 紀子, 細谷, 紀子, 雨宮, 有子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2021
Chiba Prefectural University of Health Sciences
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.12.1_1_118

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Summary:(緒言) 本研究は,高齢者施設・住宅における感染症の集団発生の実態や,当該施設・住宅および管轄する保健所が行っている感染症対策の現状を調査・分析することにより,医療職配置義務のない高齢者施設・住宅における感染症集団発生及び入居者の重症化を防ぐ方策を検討することを目的とした.(研究方法) A県に所在する全保健所の過去の感染対策活動記録を,同県感染症担当課の同意を得たうえで閲覧し,集団発生が起きた施設特性(入居者数・職員数等),施設内感染状況(発症者数,日別発症者発生状況,入院者数),保健所対応状況(事案探知日,感染拡大防止のための指導内容)等の情報を収集した.得られたデータから統計的解析を行い,発症者数や,初発患者発生から最終患者発生までの期間等に関連する要因を分析した.(結果) 2017-2019年(約3年間)における県内感染性胃腸炎集団発生事案記録を閲覧することができた.閲覧した集団発生は計195件であり,その主な内訳は,高齢者施設・住宅14件(うち医療職配置義務住宅5件)(7.2%),保育園120件(61.5%),小・中学校45件(23.1%),障害者福祉施設9件(4.6%)だった. 高齢者施設・住宅における集団発生事案14件において,平均入居者数は64.0人(SD:25.3),職員数は58.9人(SD:23.9)であり,発症した入居者数は15.2人(SD:6.9),発症した職員数は5.7人(SD:3.4)だった. 初発患者発生から保健所探知までの期間は平均6.5日(SD:4.6),初発患者発生から最終患者発生までの期間は平均10.7日(SD:5.5日)だった. 保健所の指導としては,正しい消毒手順,清潔・不潔区分の明確化,サーベイランスシステム構築等が行われていた. 発症者数の関連要因として,医療職が配置されている老健・特養に比べ,医療職配置義務のない高齢者向け施設・住宅での発症者数が有意に多かった.また,同施設・住宅において,初発患者発生から保健所探知までの期間と,最終患者発生までの期間に有意な相関がみられた.(考察) 十分なサンプル数を確保できていないものの,得られた結果を踏まえると,医療職配置義務のない高齢者施設・住宅における感染対策の充実とともに,同住宅に感染症対策上の助言・指導する立場である関係機関(診療所,訪問看護等)との連携強化の必要性が示唆される.また,感染症罹患を疑う入居者を把握した際の早急な保健所への報告を促す啓発的な取り組みが必要であると考えられる. 今後,さらにサンプル数を増やし,医療職配置義務のない高齢者施設・住宅における感染症集団発生の関連要因を精査するとともに,感染症発生および入居者の重症化を防ぐ方策を引き続き検討していく.(倫理規定) 本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:2019-25).(利益相反) 本研究において,開示すべきCOIは存在しない.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.12.1_1_118