新人保健師のリフレクション力育成のためのファシリテーションガイドの開発

(緒言) 我々は,新人保健師がリフレクション力を身に付けることが現任教育上の重要なニーズであることを見出し1),平成26年から「新任期保健師リフレクション力育成プログラム」(以下プログラム)を実施している.プログラムにおいて効果的なファシリテーションを導くガイド(以下ガイド)が必要と考えガイド案を作成した.今回は,ガイド案を用いて実施したプログラムの効果を検討することを目的とした.(研究方法)1.先行研究等を基にガイド案を作成した.ガイド案には,a.ファシリテーター自身の教育者・実践者(保健師)としての自己研鑽をベースに,b.ファシリテーター自身のワークショップの事前準備と支援体制整備,c.リ...

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Published inThe Bulletin of Chiba Prefectural University of Health Sciences Vol. 12; no. 1; p. 1_113
Main Authors 杉本, 健太郎, 泰羅, 万純, 佐藤, 紀子, 細谷, 紀子, 雨宮, 有子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2021
Chiba Prefectural University of Health Sciences
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.12.1_1_113

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Summary:(緒言) 我々は,新人保健師がリフレクション力を身に付けることが現任教育上の重要なニーズであることを見出し1),平成26年から「新任期保健師リフレクション力育成プログラム」(以下プログラム)を実施している.プログラムにおいて効果的なファシリテーションを導くガイド(以下ガイド)が必要と考えガイド案を作成した.今回は,ガイド案を用いて実施したプログラムの効果を検討することを目的とした.(研究方法)1.先行研究等を基にガイド案を作成した.ガイド案には,a.ファシリテーター自身の教育者・実践者(保健師)としての自己研鑽をベースに,b.ファシリテーター自身のワークショップの事前準備と支援体制整備,c.リフレクションが促進される基本的環境(会場・時間・グループ)の事前整備,d.参加者の目的意識の共有と自助的グループ活動の促進,e.グループ・リフレクション促進のための基本的態度・行動・スキル,f.リフレクション促進のための具体的な進め方・問いかけの6つの柱を立てた.本プログラムは新任期保健師を対象としているため,eの内容として,一般に重視される「主体的参加を支えるコーチング」に加え,「共に行為の意味を考え教訓を見つけるティーチング」も含めた.2.地方自治体へ就職後3年未満の保健師を対象に,ガイド案を用いたプログラムを実施した.プログラムでは2か月毎に3回,気になっている個別支援について事前にワークシートに記述した上で,ファシリテーターを含め4~6名でグループ・リフレクションを行った.3.1)プログラム参加前後にリフレクションスキルの自己評価(10項目・5件法)とその理由を質問紙調査した.プログラムの全回参加者を分析対象とし評価尺度は得点換算し前後比較した.2)ファシリテーションの評価について,質問紙調査(12項目・4件法)を1・2回終了時に行い,3回目終了時にファシリテーターの発言・態度に対する満足度とその理由等を聴取した.(結果) 全回参加者は6名だった.1)全回参加者のリフレクションスキルの自己評価の平均得点は「感情をありのままに表現できる」(3.50→4.17),「保健師としての信念・価値を見出せる」(2.83→3.33)で上昇が大きかった.一方,批判的分析や評価に関する項目は横ばいで,理由に「支援の意図や判断に自信がないと説明できない,対象者に役立つ支援だったか判断できない,できないので先輩等に相談する」の記述があった.2)ファシリテーションの評価は「話をよく聞いてもらえた」「自分の考えや思いを認めてもらえた」が特に高かった.2回目では「異なる視点を得られた」「次回までにすべきことが分かった」等の評価が上がり,半数の項目で全員が最高評価(とてもそう思う)と回答した.理由に「支援の目的や内容を肯定され・関わりの効果を意味付けられ嬉しかった・自信になった」等があった.一方,「主体的に参加できた」「対話を通して自分の考えを意識化できた」の評価は他より低く,ワークショップの課題として「継続支援しておらずワークシートに書くことがない」等の記述があった.(考察) プログラムの成果として,リフレクションスキルである「感情表現」「信念・価値の発見」が進み,ファシリテーターによる「肯定」「意味付け」を契機に「承認」「自信」が実感されていた.しかし,新任期は実践的で適切な判断基準の獲得途上であることや継続支援自体の実施が少ない状況もあり,これらの状況を踏まえつつ,批判的分析等を進めるための「自己の考えの意識化」「主体的参加」を促すファシリテーションの強化が課題と考えられた.(倫理規定) 著者の所属機関の研究等倫理委員会の承認を得て行った(2019-18).(利益相反) 開示すべきCOI関連事項はない.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.12.1_1_113