患者調査における平均診療間隔の分布と再来外来患者数推計値の変化

目的 患者調査は日本における基幹的な傷病統計として利用されており,入院患者数,初診外来患者数,推計再来外来患者数の和で傷病別の総患者数が算出される。このうち推計再来外来患者数は平均診療間隔と週間診療日数を基にした推計式により算出されているが,平均診療間隔は前回診療日より30日以内に受診した患者のみが推計に利用されており,31日以上の患者は除外されている。しかし,近年の診療間隔延長を通じて,推計患者数に影響が及ぶことが予想される。本研究では,平均診療間隔の分布が診療間隔31日以上の患者を組み入れることで,どう変化するかについて全傷病および傷病別で比較した。また,前回診療間隔の変化と推計方法によっ...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 64; no. 10; pp. 619 - 629
Main Authors 川戸, 美由紀, 橋本, 修二, 山田, 宏哉, 三重野, 牧子, 久保, 慎一郎, 野田, 龍也, 谷原, 真一, 今村, 知明, 村上, 義孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2017
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.64.10_619

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Summary:目的 患者調査は日本における基幹的な傷病統計として利用されており,入院患者数,初診外来患者数,推計再来外来患者数の和で傷病別の総患者数が算出される。このうち推計再来外来患者数は平均診療間隔と週間診療日数を基にした推計式により算出されているが,平均診療間隔は前回診療日より30日以内に受診した患者のみが推計に利用されており,31日以上の患者は除外されている。しかし,近年の診療間隔延長を通じて,推計患者数に影響が及ぶことが予想される。本研究では,平均診療間隔の分布が診療間隔31日以上の患者を組み入れることで,どう変化するかについて全傷病および傷病別で比較した。また,前回診療間隔の変化と推計方法によって各疾患の再来外来患者数がどの程度変化するかについても検証を行った。方法 1996年から2014年までの患者調査の調査票情報(病院票・一般診療所票)に基づき再来外来患者数を,「診療間隔別」,「傷病分類別」に集計した。また,平均診療間隔を基準とする前回診療区分が10日増加するごとにどの程度変化するかを「診療間隔別」,「傷病分類別」に集計した。傷病分類は厚生労働省が作成している傷病分類表(大分類,小分類)を使用した。結果 ほとんどの傷病で再来患者の診療間隔は延長していた。全再来外来患者のうち,前回診療から30日以内(現行の推計方法)に受診した患者の割合(全傷病)は,1996年では91.2%であったが,2014年の調査では74.4%まで低下していた。また,前回診療間隔の算入上限を30日から90日に変えて平均診療間隔を推計すると,再来外来患者数の推計値は2014年の全傷病において1.69倍となるなど,各傷病で大幅に増加した。調査日の再来外来患者数は,前回診療間隔1日目(翌日)に最初のピークがあり,その後は,7の倍数(週単位)でピークが生じており,他の調査年次や傷病分類ごとの集計でも同様の傾向が見られた。結論 患者調査において外来診療間隔は年とともに延長していることが明らかとなった。また,前回診療間隔の基準を変えることで,これまでより大幅な患者数の上昇を認めることがわかった。今後,総患者数の推計において算入対象とする診療間隔を再検討する必要がある。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.64.10_619