柴胡桂枝湯が奏功した顎関節症の1例

今回,罹病期間が長期に及び精神神経症状を伴った顎関節症患者に対し,柴胡桂枝湯を投与したところ著効した症例を経験した。患者は,79歳女性で,10年前より両顎関節周囲の疼痛があり,顎関節症と診断された。消炎鎮痛剤投与やオーラルアプライアンス治療を受けていたが症状は改善しなかった。増悪因子はストレスであり心理社会的因子の関与が示唆されたが,精神療法を受けることは希望されず,漢方内科を受診した。胸脇苦満と両側上腹部の腹直筋の緊張,心下支結(中脘の圧痛)といった腹候に着眼して柴胡桂枝湯を処方した。柴胡桂枝湯を5.0 g/日,2週間の投与であったが顎関節症の症状は速やかに改善し,精神症状の改善も得られた。...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 76; no. 1; pp. 20 - 23
Main Authors 浅川 明弘, 網谷 真理恵, 河野 恵子, 志水 倫子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2025
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.76.20

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Summary:今回,罹病期間が長期に及び精神神経症状を伴った顎関節症患者に対し,柴胡桂枝湯を投与したところ著効した症例を経験した。患者は,79歳女性で,10年前より両顎関節周囲の疼痛があり,顎関節症と診断された。消炎鎮痛剤投与やオーラルアプライアンス治療を受けていたが症状は改善しなかった。増悪因子はストレスであり心理社会的因子の関与が示唆されたが,精神療法を受けることは希望されず,漢方内科を受診した。胸脇苦満と両側上腹部の腹直筋の緊張,心下支結(中脘の圧痛)といった腹候に着眼して柴胡桂枝湯を処方した。柴胡桂枝湯を5.0 g/日,2週間の投与であったが顎関節症の症状は速やかに改善し,精神症状の改善も得られた。本症例のように心理社会的因子の関与が強い顎関節の治療には漢方治療が有用な選択肢となりうるし,随証治療を行うことで,速やかに症状を改善できる可能性がある。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.76.20