生薬の効能別分類法の歴史

国際標準化機構(ISO)に中医学で使用される生薬の効能別分類法が中国から提案されたが,漢方医学にはそのような普遍的に標準化された分類法がない。本稿では漢方における生薬の効能別分類法の標準化に資する知見を得るために,中国大陸,日本,台湾,韓国で出版された生薬の効能別分類法で,五味,五性以外のものを薬史学的に調査した。現在の中医学での生薬の効能別分類法は中華民国時代に始まり,1956年に南京で編纂された教科書でほぼ完全に確立された。台湾や韓国での伝統医学では,現代中医学とほぼ同じ効能別分類を採用していた。一方,江戸時代の日本では生薬の効能別分類が研究されず,大正時代に西洋医学用語を用いた分類方法が...

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Published in日本東洋医学雑誌 Vol. 76; no. 1; pp. 46 - 54
Main Authors 笛木 司, 牧野 利明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本東洋医学会 2025
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ISSN0287-4857
1882-756X
DOI10.3937/kampomed.76.46

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Summary:国際標準化機構(ISO)に中医学で使用される生薬の効能別分類法が中国から提案されたが,漢方医学にはそのような普遍的に標準化された分類法がない。本稿では漢方における生薬の効能別分類法の標準化に資する知見を得るために,中国大陸,日本,台湾,韓国で出版された生薬の効能別分類法で,五味,五性以外のものを薬史学的に調査した。現在の中医学での生薬の効能別分類法は中華民国時代に始まり,1956年に南京で編纂された教科書でほぼ完全に確立された。台湾や韓国での伝統医学では,現代中医学とほぼ同じ効能別分類を採用していた。一方,江戸時代の日本では生薬の効能別分類が研究されず,大正時代に西洋医学用語を用いた分類方法が採用された後は,中薬学での分類を採用した成書や,中薬学を基礎に日本独自の方法を加味した分類法が登場した。日本では,今後の漢方医学における生薬効能別分類法の標準化が問われている。
ISSN:0287-4857
1882-756X
DOI:10.3937/kampomed.76.46