骨芽細胞によるCX3CL1の発現とその調節: 関節リウマチの病態形成への関与

CX3CL1 (フラクタルカイン) は膜結合型のケモカインであり細胞遊走活性のほかに細胞接着活性をも合わせ持っており関節リウマチ (RA) の病態にも関与している.RAの骨破壊において骨芽細胞 (OB) および破骨細胞の役割は重要である.この骨芽細胞におけるCX3CL1の発現調節機構を解析した.RAおよび変形性関節症 (OA) 患者の骨組織から骨芽細胞を分離培養してCX3CL1の産生ならびにmRNA発現をELISAおよび定量real time PCR測定した.正常コントロールは正常ヒトの外傷性骨関節手術時に分離した.RA由来OB (RAOB) からのCX3CL1産生は無刺激およびtumor n...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in昭和医学会雑誌 Vol. 68; no. 2; pp. 98 - 105
Main Authors 磯崎, 健男, 松倉, 聡, 小田井, 剛, 笠間, 毅, 足立, 満, 手塚, 正一, 若林, 邦伸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 28.04.2008
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0037-4342
2185-0976
DOI10.14930/jsma1939.68.98

Cover

More Information
Summary:CX3CL1 (フラクタルカイン) は膜結合型のケモカインであり細胞遊走活性のほかに細胞接着活性をも合わせ持っており関節リウマチ (RA) の病態にも関与している.RAの骨破壊において骨芽細胞 (OB) および破骨細胞の役割は重要である.この骨芽細胞におけるCX3CL1の発現調節機構を解析した.RAおよび変形性関節症 (OA) 患者の骨組織から骨芽細胞を分離培養してCX3CL1の産生ならびにmRNA発現をELISAおよび定量real time PCR測定した.正常コントロールは正常ヒトの外傷性骨関節手術時に分離した.RA由来OB (RAOB) からのCX3CL1産生は無刺激およびtumor necrosis factor alpha (TNF-α) , interferon gamma (IFN-γ) の刺激においてもほとんど産生はみられなかったが, TNF-αとIFN-γの共刺激により著明に産生増強が認められた.この発現は免疫染色ならびにフローサイトメトリーにおいても確認された.このOBからのCX3CL1産生はOAOBあるいはnormal OBに比してRAOBにおいて増強していた.このCX3CL1はmRNAレベルにおいても同様にRAOBにおいて高発現であった.サイトカインの共刺激による産生増強の機序を明らかにする目的で細胞内シグナル伝達因子の関与を検討した.RAOBによるnuclear factor kappa B (NF-κB) のmRNA発現はそれぞれのサイトカイン単独に比して増強していた.さらにこのNF-κBを阻害するpyrrolidineの添加によりCX3CL1の産生および発現は有意に低下した.またこのNF-κBに対するsiRNAをトランスフェクションし阻害することによりCX3CL1の産生および発現は有意に低下した.以上の結果は骨芽細胞がCX3CL1の重要な発現細胞でありその発現調節は炎症性サイトカインとNF-κBにより制御されていた.
ISSN:0037-4342
2185-0976
DOI:10.14930/jsma1939.68.98