介護保険新規認定者において要介護度が重度となる原因疾病の検討

目的 健康寿命の延伸は地域における保健福祉活動の重要課題であり,地域の実情に合った予防対策が求められている。本研究では,健康寿命短縮の状態となる重度な介護度をもたらす疾病を明らかにすることを目的として主治医意見書に記載された疾患名の分析を行った。方法 2013, 2014年度の2年間に新規に要介護状態(要支援を含む)と認定された第1号被保険者4,089人を対象とし,記載された疾患名を国民生活基礎調査の介護票の疾病分類に基づいて分類した。介護度の軽重については,要支援1~要介護1の群(以下「軽度群」とする。)と要介護2~5の群(以下「重度群」とする。)の2群に分け,各原因疾病と介護度との関連につ...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 64; no. 11; pp. 655 - 663
Main Authors 高橋, 恭子, 築島, 恵理
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2017
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.64.11_655

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Summary:目的 健康寿命の延伸は地域における保健福祉活動の重要課題であり,地域の実情に合った予防対策が求められている。本研究では,健康寿命短縮の状態となる重度な介護度をもたらす疾病を明らかにすることを目的として主治医意見書に記載された疾患名の分析を行った。方法 2013, 2014年度の2年間に新規に要介護状態(要支援を含む)と認定された第1号被保険者4,089人を対象とし,記載された疾患名を国民生活基礎調査の介護票の疾病分類に基づいて分類した。介護度の軽重については,要支援1~要介護1の群(以下「軽度群」とする。)と要介護2~5の群(以下「重度群」とする。)の2群に分け,各原因疾病と介護度との関連について男女別にχ2検定を用いて検討した。その後,単変量解析で有意な関連が見られた疾病を説明変数とし,年代を調整変数とした多重ロジステッィク回帰分析を実施した。結果 男性では悪性新生物が介護度にかかわらず最も多く,軽度群では127人(12.1%),重度群112人(22.2%)であったのに対して,女性の軽度群は関節疾患が最も多く452人(23.0%),重度群では認知症が108人(19.0%)で最も多かった。単変量解析で介護度群間に有意差が認められた疾病は,男性では脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),関節疾患(P<0.001),糖尿病(P=0.015),骨折・転倒(P=0.028),その他(P<0.001)であり,女性では,脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),関節疾患(P<0.001),認知症(P<0.001),パーキンソン病(P=0.003),その他(P<0.001)であった。多重ロジステッィク回帰分析の結果,男性では脳血管疾患(P=0.002),悪性新生物(P<0.001),骨折・転倒(P=0.031)が重度の介護度と関連した要因として,関節疾患(P<0.001),高血圧(P<0.001)が軽度の介護度と関連した要因として認められた。女性に関しては,脳血管疾患(P<0.001),悪性新生物(P<0.001),認知症(P<0.001),パーキンソン病(P=0.002)が重度の介護度と関連した要因として,関節疾患(P<0.001),高血圧(P<0.001)が軽度の介護度と関連した要因として認められた。結論 新規認定時点で重度の要介護度と関連する要因としては,男女共通に脳血管疾患,悪性新生物であることが明らかとなった。これらの疾患は前期高齢者において多い疾患であり,高齢期になる以前の生活習慣病対策が介護予防の上からも重要であることが示唆された。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.64.11_655