多施設共同疫学研究における中央事務局業務 実態の類型化と今後の標準化にむけて

目的 研究が大型化する中,疫学研究でも多施設共同で行われていることが増えている。しかし,多施設が関わるために増加する様々な業務にあたる中央事務局は,個々の経験に基づき運営され,業務内容は明らかとなっていない。 方法 国内で行われている 6 つの多施設共同疫学研究の中央事務局ならびにサイト(各研究の分担/研究協力機関)担当者を対象に,中央事務局の業務に関する面接調査を行い,その内容を整理した。 結果 中央事務局とサイトとの関係は,研究に関する意思決定方法,資料•試料の流れ,役割分担などにより,「中央事務局統治型」,「共同統治型」に大別された。いずれの関係であっても,把握された多数の具体的な業務内...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 60; no. 10; pp. 631 - 638
Main Authors 武藤, 香織, 玉腰, 暁子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2013
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.60.10_631

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Summary:目的 研究が大型化する中,疫学研究でも多施設共同で行われていることが増えている。しかし,多施設が関わるために増加する様々な業務にあたる中央事務局は,個々の経験に基づき運営され,業務内容は明らかとなっていない。 方法 国内で行われている 6 つの多施設共同疫学研究の中央事務局ならびにサイト(各研究の分担/研究協力機関)担当者を対象に,中央事務局の業務に関する面接調査を行い,その内容を整理した。 結果 中央事務局とサイトとの関係は,研究に関する意思決定方法,資料•試料の流れ,役割分担などにより,「中央事務局統治型」,「共同統治型」に大別された。いずれの関係であっても,把握された多数の具体的な業務内容は,I.研究の計画と遂行に関わること(1. 計画立案,2. 研究実施準備,3. 対象者リクルート,資料•試料収集,4. 資料•試料管理,5. 対象者追跡,6. 試料分析•結果解析,7. 結果公表),II.研究組織に関わること(1. 事務局内の体制維持•運営,2. 研究全体の体制維持•運営,3. 研究費の配分•執行,4. サイトの体制維持•運営,5. サイトとのコミュニケーション),III.研究の社会的側面への対応に関わること(1. 倫理•法•社会面の対応,2. リスク管理•危機管理,3. 広報)の 3 領域15分野に類型化できた。 結論 我々は,明らかとなった中央事務局業務をさらにどの研究であっても必須と考えられる項目(A. ミニマムリクワイアメント),中央事務局とサイトとの関係や研究費のあり方など状況に応じて必要な項目(B. ケースバイケース),そして研究が円滑に進むためによりよいレベルと考えられる項目(C. ベスト•プラクティス)の 3 群に整理した。今後,業務項目リストは,(1)現在実施されている研究の中央事務局業務の自己点検•評価の資料,(2)新しく開始される多施設共同疫学研究の中央事務局業務構築の資料,(3)中央事務局の業務内容を多施設共同疫学研究の事業評価に導入する場合の評価項目案や標準化に向けたシステム作りへの資料,としての活用が期待できる。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.60.10_631